第117話またわたしは日の下にこのような知恵の例を見た。~

(原文:第9章13、14、15、16)

13 またわたしは日の下にこのような知恵の例を見た。これはわたしにとって大き な事である。

14  ここに一つの小さい町があって、そこに住む人は少なかったが、大いなる王が 攻めて来て、これを囲み、これに向かって大きな雲梯を建てた。

15  しかし、町のうちにひとりの貧しい知恵のある人がいて、その知恵をもって町 を救った。ところがだれひとり、その貧しい人を記憶する者がなかった。

16  そこでわたしは言う、「知恵は力にまさる。しかしかの貧しい人の知恵は軽ん ぜられ、その言葉は聞かれなかった」



人口の少ない小さな町に、強大な軍勢を持つ王が攻勢をかけ、その町の周囲を囲み、戦いのための砦を築きあげた。

しかし、その小さな町の中に、貧しいけれど一人の知恵を持つ人がいた。

その人は、知恵を駆使して、強大な王と交渉したのだろう、その町を強大な王とその軍勢から守った。

しかし、その貧しく知恵のある人のことを、誰一人記憶にとどめる人はいない。

「すぐれた知恵は強大な力にも勝る、しかし、その知恵は軽く見られてしまい、言葉も聞かれず、残ることも無かった」



人は、自分の都合で、他者を判断する身勝手な生き物。

それが、自らの命を救ってくれた人に対しても。

その人の知恵や言葉が面倒になれば、無視し、やがては忘れ去ってしまう。

悲しいけれど、これも人間という生き物の現実。

ほとんど、目の前のことしか、考えていない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る