第15話わたしはまた、身をめぐらして、知恵と、狂気と、愚痴とを見た。

(原文:第2章12)

わたしはまた、身をめぐらして、知恵と、狂気と、愚痴とを見た。そもそも、王の後に来る人は何をなし得ようか。すでに彼がなした事にすぎないのだ。



ソロモン王は、様々なこの世の事例の探求を振り返ってみた。


知恵のある生き方。

狂気に操られた生き方。

愚かな知恵による生き方。


確かに、様々なことを知った。

しかし、不安がある。

そもそも、自分自身の後継者たちは、自分とは別人である。

彼らは、自分と同じように出来るのだろうか、あるいは、全ての実績を台無しにしてしまうのではないか。

出来たとしても、ソロモン王自身が空しいと感じている事をするに過ぎないのではないか。




どんなに苦労をして築き上げた知恵や財産であっても、自分の死とともに、自分の所有権は皆無となる。

後継者が、何をどうしようと、彼らの勝手になる。

また、彼らが、知恵のある生き方、狂気に操られた生き方、愚かな知恵による生き方の、どのような生き方を行おうが、彼らの勝手になる。

また、それも、ソロモン王自身が、すでに全て経験し、行って来た生き方のどれかに過ぎないのではないか。

それを思った時点で、結局、益などなにもない、空しさ、あるいは虚しさしか、無いのではないか。



悠久の時間の中では、人間の一生は、ただ一度にして短い有限に過ぎない。

親子であろうと、また、別の一生を送る。

期待しても期待しきれず、親自らの実績に執着すればするほど、不安は募るばかり。


よくよく考えれば「空しい」の意味は、増すばかりになる。

いわゆる日本語訳では、「空しい」となっているけれど、「虚しい」のほうが、意味が近いように思えてきた。





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