第4話 生徒会に入りたいな♡
ブリ子が転入して来て、数週間が過ぎた。
「転校してきてから今日までの間、見てて思ったんですけどぉ〜、やっぱり、兜くんと鍬形くんは、学校中の注目を浴びてて、人気者だよねぇ〜」
休み時間、教室では、兜と鍬形の席にブリ子がやってきて、そう言った。
「ゴマをすってるつもりか?」
「何の魂胆があるのでしょう?」
兜と鍬形はうさん臭そうに彼女を見たが、そんなことは気にしないブリ子は、にこにこと二人を見上げていた。
「コキ、生徒会に入りたいな♡ 今から生徒会に入るには、どうしたらいいんですかぁ?」
「はぁ〜!?」
兜と鍬形が、思いっ切りイヤな顔になった。
「キミは、つい先日、陸上部にやっと決まった身で、今度は生徒会にまで入ろうっていうのかい?」
「まったく図々しい! ふてぶてしいヤツだ!」
鍬形と兜が口々にそう言ったが、そんなことブリ子は気にしない。
「生徒会とは、生徒たちをまとめ、みんなが楽しく学校生活を送れるように働くものだ。例えばだが、お前なんかが、ちゃんと学校行事でクラスに貢献出来るのか?」
「はい! 体育祭、頑張りまぁ〜す!」
「なんだ、それは!?」
「ねぇねぇ、そんなことよりもぉ、生徒会に入る条件って『甲虫』なんですよね? 甲虫類であれば入る資格はあるんですよね? だったら、コキも甲虫だからぁ〜、入れるんですよねぇ〜?♡」
と、小首を傾げることと笑顔を忘れない。
茫然としている兜と、眼鏡男子鍬形に、ブリ子は続けた。
「兜くんと同じ髪の色だしぃ、あたしたちってぇ、仲間ですよねっ? キャハッ!♡」
ブリ子が恥ずかしそうに笑った。
兜の顔が赤くなる。
「やっだぁ〜♡ そんなに照れなくても大丈夫ですよぉ〜! コキ、ちゃんとわかってますからぁ♡」
「お前と俺たちを一緒にするなー! 照れてるんじゃない! 怒ってるんだ!」
「まあまあ、兜、こんなヤツには怒るだけ無駄だよ」
眼鏡を人差し指で持ち上げると、鍬形は、冷たい視線をブリ子に向けて言い放つ。
「キミ、勘違いしてないか? ゴキブリはそもそも甲虫なんかじゃない」
ブリ子から、初めて笑顔が消えた。
「……えええええっ!!」
兜が「マジか!?」と鍬形に確かめると、鍬形は自信たっぷりに頷いた。
「一見、甲虫に似てるかも知れませんが、カブトムシ、クワガタ、てんとう虫、ほたる、黄金虫などは甲虫ですが、ゴキブリは『ゴキブリ目』という種類です。仲間はシロアリくらい」
「シロアリ!?」
叫ぶと、ブリ子はショックのあまり、頭も顔も真っ白になった。
「シロアリって、蟻の仲間じゃなかったのか!?」
「違いました」
兜に、しれっと冷静に応える鍬形。
「そんなぁ!」
ショックのあまり、ブリ子はよろよろと椅子に座った。
「はーっはっはっ! 残念だったな!」
兜は、安心したように笑ってみせた。
しばらく顔を両手で覆い隠し、泣き真似をしていたブリ子だったが、何を思ったか、にっこりと顔を上げた。
「わかりましたぁ。じゃあ、生徒会に入るのは諦めますけどぉ、他の方法を考えま〜す♡」
兜と鍬形は、注意深くブリ子を見る。
「……案外しぶとそうだな」
「……ですね」
ケロッとして笑っているブリ子は、懲りずに発言した。
「コキがぁ、人気者になるにはぁ、この学校で皆の憧れる人と恋人同士になるのが一番だと思ってぇ~、だからぁ、兜くん〜、コキと付き合おう?」
兜も鍬形も、ブリ子が何を言っているのか理解出来なかった。
「きさま、正気か!」
「身の程知らずにも程がありますね」
「てへっ♡」
当然のごとく断られ、「じゃあ、鍬形くんでもいいよ♡」と言っても案の定断られ、呆れた二人は立ち去った。
「やっぱダメだったかぁ〜。ま、いっか!」
そんなこと、ブリ子は気にしない。
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