【番外】木蓮奈緒の観察日記


※これは木蓮奈緒がひそかに書き溜めている樺冴屋敷の人々の観察記録(いわゆる日記)から一部を抜粋し編集したものである。驚くべきことにネタバレはない。




7月25日(月)

 今日は深月先輩が問診票を書いていた。マッドさんが定期的に健康診断をしているらしい。ついでにあたしも受けさせられることになった。問診票の欄にここ三日間の睡眠時間っていうのがある。覚えてないらしい深月先輩がとおりかかった真信先輩に尋ねていた。すると先輩は「深月の三日間の睡眠時間? ちょうど二十七時間だね。お昼寝も含めると三十三時間二十分かな」と即答。思わず「キモっ」と言ってしまった。さすがに反省だ。真信先輩も、深月先輩の体調を心配しているからこそ睡眠時間を把握しているんだろうに。でも(どうして僕、罵倒されてるの?)みたいな表情がムカついてまた「いやマジでキモいです」と言ってしまった。

 それにしても即答はキモいと思う。ていうかどうやって把握してんの? 深月先輩、ちゃんと夜は自室に移動してるし。まさかのぞきじゃ【ここから先は筆圧が乱れ読み取れない】



7月26日(火)

 今日は昼から健康診断だった。マッドさんの倉に女性陣だけ集められる。深月先輩とあたしだけじゃなかったらしい。身長体重に心電図。血液検査まであった。マッドさんが全ての測定をするから時間がかかる。大変そうだ。問診は倉の隅にカーテンがされ、そのしきりの中であった。静音さんがなかなか出てこない。と思ったら真っ赤な顔をして出てきた。いったい中で何があったんだろう。自分の問診のときこっそりマッドさんに聞いてみたけど、患者の情報は秘密だとはぐらかされてしまった。意外とガードが堅い。あたしの治療もバッチリしてくれたし、マッドさんって、実は真面目な人なんじゃないだろうか。



7月27日(水)

 千沙ちささんが縁側でふきもどしを吹いていた。身長高いのにああいうおもちゃでよく遊んでるのなんでだろ。この間もパッチンガムにやられたし。駄菓子屋にあるようなおもちゃが好きなのかな。真信先輩に聞いたら、「彼女はいろんな人格をかぶるから。普段は透明なんだ」とのこと。いや、どういう意味か分かんないんですけど。透明って、別に幼児ってことじゃないですよね? なにげなく隣に座ったら、吹き戻しを顔面に向かってぷーぷーされたんですが。ひたすらほほに先っぽ当ててきた。この人すごい無表情で子供みたいなちょっかい出してくる。平賀の教育ってどうなってるんだろう。



7月29日(金)

 真信先輩と深月先輩は、静音さんと千沙さんを連れて緒呉おくれという場所に行くらしい。いいなぁ旅行。あたしも行きたいな。皆さんが帰ってきたら、海にでも行きませんかって誘ってみよう。

 ところで、静音さんと部屋にこもってた千沙さんが、出てきた途端にすっごい喋るようになったんだけどなに? 怖いんだけど。静音さんに「こういう感じでどうでしょうか」って訊かれたけど何のこと? あ、書いてて気づいたけど、もしかして人格の調整ってことだったのかな。だったらおしとやかな感じとかリクエストしてみればよかったなあ。もったいないことした気がする。今回の千沙さんはウザかったけど、ちょっかい出してこなかった。こうなるとなんだか寂しい気がする。

 それよりも印象に残っているのが、みんなが偽名を決めているのを見てしまったことだ。潜入素人の深月先輩を混乱させないために、苗字だけ変えようとなったのは分かる。でも決め方が適当すぎた。特に深月先輩。真信先輩の「どういう名前がいい?」に「うーん、そういうのあんまり分からないかなー」で、『甘利あまり』。それでいいんだろうか。平賀の教育って本当にいったいどうなってるんだろう。

 そういえば、平賀からの情報で真信先輩のお兄さんがずっと家に帰ってないってあったけど、あれはどういうことなんだろう。兄弟そろって家出? 真信先輩は「夏休みだし、長期の仕事に行ってるんだと思うけど。その情報がどうしてこっちに来るんだろう。偉代いよは何を考えて……いや平賀が関係を?」って難しい顔をしてた。次男さんのほうらしい。お兄さんってどういう人なんだろう?



※以降の日付は忙しかったのか、走り書きが多く文量もないため未掲載。


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