ファイナルファンタジー6のこと

ファイナルファンタジー6が来る!

 小5のある日、いつものように本屋へゲーム雑誌を立ち読みしに行った僕は、雑誌の表紙にこんな文字を発見する。

『特報!FinalFantasyVI!』

 僕の中では、つい最近まで最新作であるFF5で遊んで居るところをを見ていた印象だったので、その時「え?! もうFF6なの?!」と驚いたものだった。

 そして、僕はその文字に導かれるがまま、雑誌のページをめくった。


 そこには、ファイナルファンタジー5の続編である、ファイナルファンタジー6が現在開発中だということと、いくつかのゲーム画面が掲載されていた。

 その記事に、具体的にどんなことが掲載されていたのかは、ほとんど思い出すことができない。

 なんとなくテキストとイメージイラストみたいなのが多かった記憶はある。ティナのドット絵版のイメージイラストが、大きく載っていたような記憶もあるのだが、定かではない。

 ただ一つ、ゲーム画面として掲載されていた戦闘シーンのひとつだけは、明確に覚えている。

 僕の記憶中枢の容量を大きく消費しながら保存されているのは、こんな画面だ。


 洞窟らしき背景に、巨大なカマキリのモンスター2体が互いに向き合って、縦列に並んだ主人公PTを挟んでいる、という戦闘画面。

 これを見た僕は、


 えぇ?! 

 なんだこれは……。やべえ!!


 と、思った。


 もはやこれまでのすべてのゲームのドット絵が児戯に思えるほどに、あらゆるものが恐るべき精密さで描かれていた。

 明らかにFF5よりも多い色数によって、背景は奥行きと立体感がしっかりと与えられていた。カマキリのモンスターも明らかにFF5よりも細かく描かれており、さらに強烈な陰影をつけられていることもあり、おどろおどろしく見えるし、主人公PTの面々も、豊富な色数によって、FF4や5のような平面的な印象から、立体的なドット絵に進化している。


 僕はぽかんと口をあけたまま、その衝撃的な画面を眺めていた。


 読者の方は、お前は子供のころに何度、戦闘シーンで衝撃を受けてるんだ。と、思っていることだろう。


 でも、ほんとうに衝撃だったんだから、仕方ないじゃないか!!

 当時の僕のゲームにおけるもっとも重要な指標は、戦闘シーンがどれだけかっこいいか、だったのだから。

 どれだけ敵のグラフィックに迫力があって、戦闘背景に臨場感があって、魔法のエフェクトがかっこいいかが、最大関心事だったのだ。


 薄暗い洞窟背景に、グランインセクト(カマキリのモンスター)が2体、挟み撃ちの隊列を組み、ティナとロックが挟撃されている、あのゲーム画面は、ドラクエ5のグレンデル2体とドラゴニュートのゲーム画面と同じ強さか、それ以上の鮮烈さで、脳裏に焼き付いているのだ。


 ブレスオブファイアは、確かにクオータービューはすごかったし、戦闘アニメーションも衝撃的だった。しかし、そうはいっても単純にその当時にある、だったのだ。

 また、この当時はロマンシング・サガ2の発売が間近に迫っていた時期で、既にいくつものロマサガ2のゲーム画面が公開されていた。当然、初めてそれらを見た時は、「すごい!」と思ったものだったが、それでもやはり、ロマサガ1やFF5から少し進化したら、、という予想できる範囲の見た目だった。

 


 しかし、このグランインセクト2体挟み撃ちの画面は違う。

 もう明確に違うのだ。

 やべぇのだ。

 ハンパないのだ。

 とんでもないのだ。

 次元が違うのだ。


 1年前まではドラゴンクエスト派で、FFなんか名前も聞きたくなかったことなんか、どこかへすっ飛んでいて、この未知の時空からやってきたような、壮絶な精細さで描かれた戦闘シーンは、僕の脳みその大切なことを覚えておく場所に、バシーン! と勢いよく張り付いた。


 ――そう、ファイナルファンタジー6が来るのだ。


 ファイナルファンタジー6が来る!②

 へ続く。

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