ドラゴンクエスト5が出る!!!!
ガンガンの巻末に書かれた当選者一覧の100人の中に、自分の名前がないものかと、小さな文字を凝視しては毎月落胆しているうちに、1992年となる。
具体的な時期は不明だが、このあたりで、ドラゴンクエスト5の発売日は1992年の5月だと発表される。(実際のところ、発売日の発表が1991年の前半だったのか、後半だったのか、1992年になってからだったのか、まったく思い出せない)
ただ、ぶっちゃけて言ってしまえば、『発売日に100名さまにお届け!』の懸賞がまったく当たらない僕にとっては、発売日は全く関係のない話だった。
ここまで、親が唐突にファミコンを買ってきただの、親父が毎月ガンガンを買ってくれただの、まあぁ恵まれたお家にお生まれだこと! と思われたりしたかもしれないが、これは本当に異例中の異例のことだった。
子供の頃の僕が、自分が心の底から欲しいと思っているものを買って貰えるのは、誕生日とクリスマスだけで、しかも金額上限もあった。
だから、当時僕が持っていたファミコンソフトはドラクエシリーズ一式と、あと3年生の誕生日に買ってもらった『元祖!平成天才バカボン』だけだった。
そんな事情であるから、この日に出るよ!などと言われても、その日に買って貰える道理など全くなく、ましてやスーパーファミコンもないため、ねだるとなると、2個ねだらなければならず、しかもスーパーファミコンは25,000円もするため、明らかに金額上限をブチ抜いていた。
絶望的な状況であった。
いや、絶望はしていなかったと思う。単純に、「まあ、僕は遊べないんだけどね」とか思ってたと思う。
ただ、『発売日に100名さまにお届け!』が当たったら、その時はまあ、しょうがないから買ってあげないこともやぶさかではない的な雰囲気を両親が出していたので、ハガキはかなり本気のテンションで出していた。
……こうやって、回を重ねるごとに描写が盛られていくのは、単純に書いてたら思い出してきたからである。当選者発表一覧があったのを思い出したのは、まさに20分前のことだ。
まあ、結局ハガキは当たらないのだ。自分史のページとページがくっついている気配もないから、当たらないのは確かな事実である。
そうこうしているうちに、テレビでCMが始まった。
ドラゴンクエストのCMというのは、昔から実写と相場が決まっていた。
だからこのCMも実写で、今でこそ、
「おお、この実写CMよくできてるやんけ!」
とか思うけど、当時は、
「おっさんはいいからゲーム画面を出せ!!!」
としか思わないし、一瞬流れるゲーム画面は戦闘画面じゃないしで、フラストレーションしかたまらなかった。
などと言っているうちに、発売日は8月に延期される。
僕にはどうでもよいことだった。
どうせ出来ないし。
スーファミ買ってもらえないし。
ねだったところで、絶対に跳ね除けられるのが分かっているから、当時の僕はたまに親の前で、「へえええ! ドラゴンクエスト5、8月に延期したんだーー! へええ!」とか、わざとらしく大きな声で、ガンガンを開きながら言うくらいしか、しなかったように思う。
だってどうせ買ってもらえないし!!!!!
そうやっているうちに、当時テレビ東京で夕方にやっていた、スーパーマリオクラブという新作ゲーム情報を流したり、クソどうでもいいどっかの子供のゲーム対戦を見せられたりする(当時の僕の感想であり、今の僕の感想ではありません)テレビ番組の中で、チョロっとドラゴンクエスト5の画面が映ることがあった。
そこでは結構長尺でドラゴンクエスト5の初公開映像が流れまくったのだが、印象的だったのは『戦闘画面でイオラのエフェクトが出ているところ』である。
バンバンバン!!ババババン!!っていう、アレ。
みんなもちろん、脳内再生できるよね?
前情報として、魔法にアニメーションエフェクトがつくことは知っていた。
知っていたが、実際に動いている映像を見るのは、それが初めてだった。
目をひん剝くほど、衝撃だった。
スーパーファミコンって、とんでもねえんだな、と思った。
ドラゴンクエスト5、とんでもねえな、とも思った。
だって、ファミコンのときは、ピロリロリロ!っていう音のあと、画面が明滅するだけだったのだ。
それがどうだ。
あのイオラを見たか。
めっちゃ爆発してるんだぞ。
画面上がめちゃくちゃ爆発してるの!!!
やばい!!!!
なにあれ!!!!
めっちゃやりたい!!!!
ドラゴンクエスト5が出ます!!!!!
へ続く。
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