ドラゴンクエスト5はこうなるらしい!!
さて、こうして年賀状によってドラゴンクエスト5が作られていることを知った僕だったが、それからしばらくは僕の前にドラゴンクエスト5についての新しい情報は現れなかった。
ゲーム雑誌なんてものが世の中にある事を知るのはもう少し後のことで、当たり前だけどインターネットなんてものはなかった。だから、僕はただひたすら、ターバン杖クリフトとトラの絵を見て、ひたすら妄想することになる。
当時の僕が、ファミコンする以外でハマっていたのは、ドラゴンクエストっぽいステータス表をつくって、そのステータスを1レベルずつ強化し、数字を眺めながら冒険を妄想するという遊びだった。
この遊びの詳しい説明は、別の機会にすることにしよう。
とにかく僕は、年賀状の絵だけをたよりに、ひとりせっせとチラシの裏と定規を使って妄想に励んでいた。
次に僕がドラゴンクエスト5について新しい情報を手に入れるのは、小学校3年の4月、父親が僕を喜ばせようと買ってきた、「月刊少年ガンガン」の中でである。
父が買ってきたのは、ガンガンの創刊第2号だった。
その中には、ドラゴンクエスト5の衝撃的なスクリーンショット……。スクリーンショットって書くと、なんか違う気がするけど、違わないんだよな……。スクリーンショットって書くと、急に2000年代くらいになった気がしてしまう。
やっぱりいやだから、スクリーンショットって言葉は使わないことにする。
とにかく、そこあったのは、ドラゴンクエスト5の衝撃的なゲーム画面だった。
それは戦闘画面だった。
掲載されていたゲーム画面は、その1枚だったと記憶している。
平原の戦闘背景に、グレンデル(人型ブルドックのモンスター)2体と、ベビーニュート(子供ドラゴンのモンスター)が、前後列で編隊を組んでいる、開発初期の戦闘画面だ。
この戦闘画面は、その後長きにわたって、ガンガン紙面で、『ドラゴンクエスト5を100名にプレゼント! 発売日に届くぞ!』というプレゼント企画に用いられ、頭がおかしくなるくらい、何度も何度も見ることになる。
きっと、
僕はそれまで、スーパーファミコンの画面というものを、見た事がなかった。
だからことさら、その画面は衝撃的だったのだ。
色鮮やかに精細に描かれた、もはや絵のようなその戦闘画面は、小3の僕にはとてもゲームのものだとは思えず、一体この画面で何をするんだろう? 新しいドラゴンクエストは何をするRPGのドラゴンクエストになるんだろう? と混乱の極みに至っていた。
僕にはその画面に映っているゲームを遊んだらどうなるのかという感覚が想像できなかったのだ。
想像できるのは、ファミコンの黒い背景に敵が並んでいる絵で、『こうげき』を選んで敵にダメージを与え、クリフトが必要もないのに勝手に敵をグループを一定確率で即死させる『ザラキ』の呪文を唱えるドラクエなのだ。
ところが、こんなふうに背景があって、カラフルで、キレイな、遠い未来のドラゴンクエストでは、もしかして、攻撃するときは『こうげき』を選ばないのではないか? そのくらい混沌としたことを考えていた。
はじめて見るスーパーファミコンという次世代機と、はじめて見るドラゴンクエスト5という未来のドラゴンクエストの掛け算が作り出した衝撃は、壮絶なものだったのだ。
とにかく、僕はすぐに、ガンガンのドラゴンクエスト5を発売日に100名に届けるぞ! というプレゼント企画に応募した。当然当たらなかった。
その企画は、その後ドラゴンクエスト5が出るまで続くことになり、ぶっちゃけこの企画もあって、ガンガンは急速に幅を利かせていくことになる。
なるのだが、それは歴史の話であって、僕の話ではない。
僕の周りでは、中学校に行くまで、ガンガンなんて雑誌のことを知ってる人は現れなかった。
そしてガンガンを知っている人が現れたころには、僕はすでにガンガンを買っておらず、だから、『こいつ中学にもなってまだガンガン読んでるのかよ』とか思う、定規の小さなめっちゃ嫌な奴になっていた。
その話は、まあ、なんだろう。
まあいいや。
ドラゴンクエスト5はこうなってこうなるらしい!!!
へ続く。
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