第33話、俺はマゾじゃない

 次の日。


 今日は南雲が授業で朝早くに妖怪討伐しに行くため久々の一人登校中。


 うるさいのがいないと平和で良いなあと思う自分と普段騒がしいせいか静かだと少し寂しいなあと思う自分がいる。いたらいたで面倒な存在だけど、いなかったらいなかったで物足りないこの感じ、久々だなあ。


「…………あっ!」


 前方によく見知った人物の後ろ姿。俺は迷わず駆け出した。


「おーい!」


 元気よく手を振りながら駆けていくその姿は爽やか男子に見えなくもないだろう。しかしこんなよくある青春の1ページが次の瞬間台無しとなる事態に。


 1、その人物に振っていた手を捕まれる。


 2、手を引きながら俺の身体を地面に叩きつける。


 3、後ろ手でうつ伏せの状態で首を絞められギブアップ。


 この間わずか2秒。


「おー柳か。おはよー」


「おはよぉっいだだだ高築!何この理不尽な状況!?なんで俺技かけられてんだよ!」


「いやー、不審者を見つけると俺の中の防衛本能が働いて護身術が発動しちゃうもんだからさー」


「クラスメートを不審者扱いかよ!」


 相も変わらず酷い。走りよって来た子犬系男子(笑)を不審者扱いした挙げ句地面に叩きつけるなんて。


「不審者ってなんだよ!怪しいことなんてひとつもやってないだろ!」


「キモイ顔でスキップしながら走りよって来た」


「キモイ!?爽やかに駆けていったの間違いだろ!」


「…………空は、青いな」


「遠い目をするな!!そして身体の自由を返せ!!」


 その後なんとか高築に解放され、教室まで一緒に向かう流れになった。



 教室について自分の席に向かい、轟木に挨拶する。が、やはりいつも通りガン無視されておしまい。


 ホームルームまで時間があるためか暇な様子でこちらを眺めていた高築の姿が見えた。


「やっぱお前マゾなんじゃん。引くわぁ」


「マゾじゃねぇっての!!」


 轟木に話しかけただけだろ!なにがどうなってそんな言葉が出てくるんだよ!


「無視されても無視されてもにこやかに話しかけるとかマゾ以外の何者でもないだろ」


「健気だと言ってくれ!!」


 その後先生が来て毎度お馴染みの変態発言マシンガントーク込みのホームルームも終わり、何事もなく授業も終わってあっという間にお昼休み。


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