幕間


 私は、嘘をついた。

 あなたを応援する……応援……応援ですって?

 いったい、どの口が。

 私の本心は結局のところ、彼女と戦う前となにひとつ変わっていないのに。

 彼女が変わってしまったこと。

 なにもかも忘れてしまったこと。

 なにもかも忘れてしまったくせに、なおもあの人を追いかけていること。


 結局。


 結局あなたは、私を振り向いてくれない。

 気にかける素振りだけ見せて、私を置いていってしまう。

 あなたの背中を追いかけるのは、もう飽きた。

 ならばいっそ、徹底的に落ちぶれて、華々しい私の活躍を後方から眺めてくれていたほうが、どんなにかマシだろう。

 でも、こんなこと言えない。言えるわけがない。

 それは、私の抱く安い期待や、醜い嫉妬ももろともに吐露することに他ならないから。

 だから私は嘘をついた。

 焼け爛れた地面を雪が覆うように、優しいフリをして本心を隠した。


 シュガー。シュガー。

 甘くて苦い、私の宝石。

 あなたはすっかり弱くなってしまったけれど。

 強引で、まっすぐで、無邪気に笑う愛らしさだけは、やっぱりかつてのあなたのままで。

 だから私は。


 だから私は――ああすることしかできなかった。

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