タイトルのない詩(うた)

エリちゃんへの詩


エリずっと好きだと言いたいけれど

ごめんね、貴女がお星さまになる前に言っておくべきだったのに─

だから君に歌うよ

この詩(うた)を


中学生の頃

育った土地を離れ、仲良しの友達とも別れることになった

そんなある日

母に連れていかれた所は

犬のブリーダーさんのところだった

玄関に入ると子犬を3匹見せてくれた

「どれがいいかな?」

そう言われて直ぐに決まった

兄も私も同じだった


シェットランドシープドッグ

コリーを小さくしたような犬

家に連れて帰ると

うれしそうに部屋の中を歩いていた


兄も私もさみしいだろうと思った母は犬がいればと思ったようだった

半年が過ぎた頃には

母は仕事に行き

兄は県外の学校へ入り

私は転校した学校に慣れるために必死

エリは一人で留守番だった


ある秋の日に近くの田んぼに行った

私の手にはボールがあった

何かで見た犬がボールを投げると

ボールをくわえて取ってくる

あんなのしてみたい

期待しながら「エリちゃんいくよ」

何度してもエリはボールに興味がなく

取りに行く気配さえなかった

私は本当にがっかりした


子犬の成長は早くて

エリは部屋に続く物置にうつされた

母から散歩を頼まれると

すぐ近くの田んぼまで行って

オシッコとウンチをすると

直ぐに家に戻った

もっと長い散歩したかったよね

ごめんね


転校した中学校では

部活動に入らなかった私にとって

夏休みの留守番が1番さみしかった

リコーダーの練習をしようと吹くと

「ウォーンウォーン」とエリが鳴いた


私が高校生になった時

坂を上ったところのバス停から通った

家に帰ると「エリがいない」

大騒ぎになった

次の日バス停の近くのタクシー会社から「犬を預かっています」と連絡が入った

どうやら学校に行く私の後を追って

迷子になったようだった


私が実家から離れた時

さみしくて毎日母に電話をかけた

「○○からの電話だとすぐわかる、エリが鳴かないから」

見えない電波のようなものをエリは

感じていたのだろうか


先日たまたま兄とエリの話しをした

「エリは本当におとなしくて」

兄が感慨深げに言った一言

ブリーダーさんの所に行って

子犬の中からエリを選んだ時と同じ想い


ごめんね

ボールを取ってこなくても

エリはとても優しかったよね

今ボールを投げると取ってくる

私のもとに届いた小さな猫の贈り物

「マナいくよー」「ん~にゃん」

ボールポイ➰➰⚾

投げる私の頭に浮かぶのは

可愛くておとなしかったエリへの

懺悔の気持ち


ごめんねエリ

あなたの名前は

エイリアン.オブ .マットウ ナリサ

ありがとうマナ

あなたの名前は

マンナ.オブ.ヴィヴィアンシャーリー


エリ

また会えたなら

いっぱいいっぱい走ろうね

慕ってくれてありがとう

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