タイトルのない詩(うた)

ポツリ ポツリと雨が降りだした

傘をひらくと一瞬 強い風が吹いた

宙を舞う傘を追いかけて

拾うこともせず走り出す


その背中を呼び止めた人がいた

息を切らし 笑みを浮かべて

飛ばされた傘を差し出した


その声 その瞳は確かに何処かで見たはず

そう思いながら 会釈をすると 走り出す

何処で遭ったことがあるのだろう?


その手の温もりまで覚えているような

せつなく懐かしい記憶

その風景までが はっきりと脳裏に浮かぶ


時の流れを越えることができるなら

きっと貴方に遭えるはず

そんな事を考えながら

受け取った傘をさすことも

振り返ることもせずに


立ち止まり 振り返っていたならば…

強くなった雨が その想いをさえぎるように

アスファルトの道に跳ね返っていた







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