宴会

赤ら顔の男が席を経ってからおよそ十分も立たないうちに、同じく小太りで背の低い男がやってきた。


「誰かただ酒をご馳走してくれんだって?」


「じいさんこの男だ。好きなだけ飲んでくれて構わないとよ。確か隼人って言ってたな。」

そう言って赤ら顔の親父は俺を指指す。

(好きなだけなんて俺言ったか……?

まあ、ここは話に乗るしかないか)


「ベリチェさんでしたっけ?

俺は隼人って言います。どうぞ好きに飲んで下さい。」

そう言って空いている席に案内した。


「坊主有り難く馳走になるぞ……はっはっはっはっ」


(ん?この豪快さ……)


改め良く良く見てみる。顎ひげに丸太のように太い腕……酒好き……


(ドワーフじゃないか……。それなら意外と簡単に話が済むかも……。)


「ベリチェさん、飲みの後で構わないのでちょっと相談乗って貰えませんか?」


「ん?酒が不味くなるような話じゃ無いだろうな?」

そう言って一瞬マジマジと俺の事を見た。


「いえいえ。取り敢えずは酒と肴を楽しんで下さい。」


そう言って俺は杯に並々と酒をついで渡した。


「おう、分かってるじゃないか」

ベリチェは『にかっ』と笑い『ガバッ』と杯を干す。


「おーいベリチェの爺さん、こっちだこっち」

赤ら顔の酔っぱらいがベリチェを呼ぶ。


(まだ話したい事があったんだが……。まあ夜は長い。先に布屋と洋服屋に顔繋ぎしておくか。)




夜は長く、酒は尽きぬが……

いつの間にか一人抜け、二人抜け最後は俺と店主だけになった。


(久しぶりに楽しかった。酒をたっぷり飲んで騒いだのなんて何年ぶりだろう?

そういやベリチェはどこに……)


そこで俺はハッとする

(いない…………じゃないか……はっはっはっはっ。)

いつの間にかベリチェもいなくなっていた。


(まあ、顔繋ぎは出来たし何とかなるだろう……。

さてと……


宿、宿に行くとするか……


待てよ……?


宿ってどこだっけ……。道もあやふやだし、名前もでてこない……)


「店主?」



「なんだ?。そろそろ店を畳みたいんだが?」



「ここいらで目立たぬ空き地ってないか?」



「空き地?空き地なら俺の家の近所にあるが?」



「そこで構わない。連れていってくれ」



「治安あまり良くねぇぜ?」



「構わない」



店主は肩をすくめ頷いた。



「何をするつもりか知らんが気をつけるんだぞ?」



「ああ」



十分ほど待たされた後、空き地近くへと連れていって貰った。



「ここを真っ直ぐ100メートルほど行けば空き地だ。俺はここらで失礼させて貰うぜ」



「ありがとうよ。」



そう言って俺は空き地に向かった。

夜中なのに人の気配が結構する……


(ま、いいか。さてとだ……)


俺は土魔法でカチンカチンに硬いカマクラを作り、中に入った後、入口を塞いだ。

(後はベッドだな……)


同じく土を整形し、ベッドを作った後寝転がだた。


『バンバンバン』

途中何か壁を叩く音がしたが……


(気のせいだろう。)


俺は構わず眠りについた。


(久しぶりに楽しい宴会だったな……)




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