ついてねぇ
暫く走行後
それ(破滅)は突如としてやってきた。
『ぼこっ』
『ガリ』
『ギギギ』
異音が響く……
「シュバルツ、ロート止まれ」
速度を落としたまさにその時、脇を馬車の車輪が転がっていくのが見えた。
(危なかった……)
急いで降りる
(これは車軸と車輪両方いってるな……)
「全く、ばか馬とばか馭者が。程度というものを知らんからこうなる。」
ガルダが呆れた顔をして馬車から降りてきた。
(確かに悪のりし過ぎた……な)
「土魔法を使って補強するからガルダ社内でこれでも食べて休んでいてくれ。」
そう言ってゴブリン魔石を5個ほど渡す。
「ほう。なかなか……」
「……?」
「なかなか気がきくではないか……」
ガルダは満面の笑みを浮かべ馬車の中へと戻っていった。
シュバルツ達が物欲しそうな目で見ているのが分かったので各々にも魔石を渡す。
(俺だけ飯抜き……か。さっさと直してどこかで旨いものが食いたいな)
魔石のエネルギーを取り込み
車軸を応急処置をした。
(車輪は直すには少し時間がかかりそうだな。
円状に整形することは難しいか。
取り敢えずだしだまし帝都まで向かうとしよう。)
「ガルダ取り敢えず応急措置は済んだんで、このまま帝都へ向かうぞ?」
そう言ってガルダへ先を促した。
ガルダは大きくため息をついた後口を開いた。
「駄目じゃ、こんなぼろぼろの馬車で
帝都に向かうなどもっての他じゃ。
帝都の手前にムジクと言うそこそこの大きさの町があったはず。
そこで鍛冶屋を探し、直してから帝都へは向かう。」
「少しでも早く行きたいんだが?」
「妾には色々考えがある。信頼するんじゃな。」
(馬も買わされたし、今さら他の手立てを考えるのも時間の無駄だな……。
それに馬車を壊した遠因は俺にもあるし。)
何とか自分を納得させムジクに向かうことにした。
それから馬車に乗ること3時間ほどで町に着いた。
(さてと……鍛冶屋はどこだ?)
道行く人に馭者台の上から声がけをするも誰も答えてはくれない。
そこそこの町であり、人の出入りもあるのだが、道行く人は俺達が近づくとまるで避けるように散っていく。
「何故だ?」
暫く声がけを続けたものの芳しい成果はえられない……
一時間ほど経った頃合いで鍛冶屋探しを締めた。
(取り敢えず宿を先に決め、一服した後に改めて鍛冶屋を探すこととしよう……)
そう考え、宿探しを始めた。
◼️□◼️□◼️□◼️□
町の中心と思われる場所に向かい宿屋と思われる看板を探す。
(多分ベッドマークが宿屋だろう。でその下に付いている王冠のようなマークがランクだとしたら……)
いくつか見比べているうちに王冠が5つ並んでいる宿屋を見つけた。
今日は意外と体力を使ったから、たまには良い宿屋も良いだろう。宿屋の周りを見るに厩舎らしきものも見えた。
場所を止め、宿屋に入る。
「いらっしゃいませ。これはこれは後貴族の従者様で?お泊まりですか?」
「ああ、一泊頼む。」
「馬車はお預かりで?」
「頼む。」
「主様は男性で?」
「いや女性だが?」
「ならばお風呂付きでよろしいでしょうか?」
「ああ。それで頼む。」
「先払いで5金貨頂きます。」
(久しぶりに風呂で寛げる。食事も旨いものが出そうだな……)
「金貨五枚だ。これで良いか?」
「確かに。それで執事様のお宿はどちらで?。朝ご主人の準備が出来次第呼びに行かせますが?」
(えっ……俺もここで泊まれるんじゃなかったのか?)
「宜しければ私どもの提携の宿を紹介致しますが?」
(従者が主人と同じ場所に泊まるなぞあり得ないってか?)
俺は仕方なく、宿の主人に提携の宿の場所を聞き、その宿を去ることにした。
(まったくついてないな)
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