頑張りにはご褒美を

「なんと言うか予想のかなり右斜めの行動をとる奴じゃの」

開口一番のガルダの言葉がこれだった。


「それで……この生き物はなんじゃ?」


「馬だ。」


「もう一度聞くが……」


「だから馬だと言っている。」


「確かに馬のような形をしているが、馬がこんな殺気を放つ筈無いじゃろうが?」


「確かに少しだけ気性が荒い気はするが……馬だ。」


「………………何より何故魔石をボリボリ食っておる?」


「世の中は広い。

魔石が好きな馬もいるんだな……。

まあ、馬屋で購入したんだ。馬で間違いあるまい。」

そう言って俺は惚けた。


今一つガルダが納得していないのは分かったが、魔界の馬だろうがなんだろうが馬は馬に違いあるまい。


(大体馬を買うのにあれだけの費用がかかるなど一言も言わなかっただろうに。

何が見栄えの良い馬だ……

払ったのは俺だぞ……)


「確かに見栄えも良さげだし能力も高そうだが……。何故殺気を……」


ガルダもそれ以上の詮索を諦めたのか、口をつぐんだ。


「こいつらの名前はシュバルツとロートだ。よろしく頼む。」


「分かったが、チョイとしつけさして貰うよ。」


「ああ。俺は疲れたんで一寝入りさして貰うわ。」


「ああ。とりあえずソファーでも使うと良い」




次に俺が起きた時に見たのは……

完全に飼い慣らされたシュバルツの姿だった。


ガルダの奴一体何をしたんだ?


◼️□◼️□◼️□◼️□


翌朝屋敷の前には馬車が用意され、二頭の馬は繋がれていた。


「少し時間を取りすぎた。帝都に出かけるぞ」

そうガルダはのたまった。


「俺はお前らと違って、人間なんで飯を食わないとならないんだが?」


「そんなもの帝都で食べればよい。」


(こりゃ言ってもあかんやつや……)


飯を締め馬車に乗り込む。


「お前はあっちだあっち。お前が馬車に乗り込んだら誰が運転するんだ?」


そう言われ、俺は馭者台へと座ることになった。


(まあ、確かにそうだが……。馬車で行くことを別に俺は頼んじゃいないぞ?)


「取り敢えず、帝都まで南へ一直線だ。着いたら妾を起こすのだぞ?」


そう言ってガルダはシェードを閉めた。


(その前にと……。)


俺は屋敷裏に埋めておいた魔石袋とミスリル袋を確かめに行く。

オーガの魔石を握りしめ、土魔法を起動した。


ゴブリン魔石を土の中より取り出し、服のポケットに一部詰め込む。


その後馬車に戻り、シュバルツ達に語りかける。


「お前達頑張って走れば、それなりに褒美をやるぞ?この方角に向かって街道を一直線に走れ」


そう言った途端……

物凄いGが身体にかかるのを感じた。


馬車は軋りながら走る。街道とは言えそれほど良い道である筈もなくまたサスペンションなるものがついているわけでも無い為、俺は振り落とされぬ用馭者台にしがみついた。


所々、車輪は石を巻き上げ弾き飛ばしていく。

(車軸が曲がらないだろうか?

いや、それ以前に馬車が帝都まで持つだろうか?)


馬車の客席で時々聞こえる

「ぎゃっ」とか「げぇ」とか「痛い痛い」とかのわめき声はこの際無視することに決めた。


(だってこいつら頑張っているもんな……)



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