スパイ容疑 ◼️10/31推敲◼️
俺は階下の応接室で一先ず待っているよう言われた……
(考えて見ればガルダの衣服は引きちぎれたままだったっけ。
シーツを羽織っていたとは言え、気を回すべきだったな。)
などと考えながら暫く待っているとガルダが降りて来るのが分かった。
(まさかとは思うが、カラスの羽で作られた服をもう一着
なんて落ちは無いだろうな……)
幸いにもその考えは杞憂で、ワインレッド色のシックなドレス姿であった。
(意外と綺麗な顔のつくりをしている。髪は良く見ていなかったがシルバーブロンドってやつだな。)
「待たしたな。どうだ?久しく他の服を着る機会も無かったが。」
「悪くないと思うぞ。」
「それだけか?」
「似合っているな」
「はあ、世辞一つもまともに言えんのかお前は……」
「えーと」
「もう良いわ。ところで、お前の名前はなんと言う?」
(そういや名も名乗っていなかった……)
「佐藤 隼人だ。」
「佐藤 隼人か……何て呼べばよい?」
「隼人でオーケーだ。」
「妾はガルダ·ソルニャじゃ。妾も呼び方はガルダで良い」
「よろしくな。ガルダ。」
「こちらこそな。」
彼女もうなずいた。
「さて、話は変わるが訳あって俺は帝都に向かわないとならない。」
「それは聞いた。ではすぐにでも出発するとしようか。」
(意外と乗り気なんだな……)
「ただ、問題がいくつかあって…………悩んでいる。」
「なんじゃ?」
「帝都に入るにあたっての通行証などを持っていないんだ。」
「それだけか?」
「金を持っていない……。まあ正確に言えば単位がでかすぎて、くずさないと使えないってところだ。」
「他には?」
「入るにあたって心読みの審議をパスできる気がしない。」
「他には?」
「今のところそれだけだ。」
「ふむ……。
隼人、お前実は犯罪者だとかじゃあるまいな?」
「この世界へ来て犯罪を犯したことなぞない。むしろ被害者と言えると思うが。」
「ふむ。後はどこぞの国のスパイとか?」
「俺がスパイに見えるか?」
「………………」
「間が気になるが……」
「はっきり言おう。
この土地の人種と明らかに違う外見、ダンジョンに単独に入ってゴブリンを狩ってくる度胸ともある。
資金も潤沢に持っているとも聞く……。
それらの事実からして指し示すのは他国の間者だ。」
「うーん」
「でも、お主は間違いなく間者ではないな。」
「?」
「行動に隙がありすぎる。人柄をとっても
とてもじゃないがお主にはなれん。まあ、あえてそう言うものを演じている可能性も無くはないがの?」
「まあ、どちらとも違う。俺はお前らの言葉で言うところの迷い人だ。」
「迷い人か……。なるほど……
なら一層、不可解なことだらけじゃな。」
「?」
「……分からぬのか?」
「………………」
「迷い人のくせに何故この地の言葉を喋れる?
しかも下町訛りのひどいスラングを……。
そして何故マナを操れるんだ?
迷い人に魔術の素養があるなぞ聞いたこともない。それだけじゃない……どうやってか知らぬがバルバレスまで使役する方法を持っている」
ガルダは続ける
「また何故くずさないと使えない単位の硬貨をお前は持っている?
迷い人が手にいれられる額としては明らかにおかしいじゃろう。
それにそもそも何故帝国圏内にいるのにお前は保護されていないんだ?迷い人の保護及び確保はこの国における最先事項だぞ?」
ここまで捲し立てた後、疲れたのかガルダは口をつぐんだ。
(うん。確かに突っ込みどころ満載だな。)
「聞きたいか?長くなるぞ?」
「ああ、かまわない。同行する以上知っておかないと駄目だろう。」
そこで俺は今までの経緯を少しだけ、はしょってガルダに告げたのだった。
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