細胞分裂

(まあ、考えようによっては強力な味方を得たと言うべきかな。)


『知能の低い魔物ならバルバレスは自在に操れるのか?』


『相性もあるが可能と思うぞ?』


『身体の大きさは関係無く?』


『知能と精神力、生命力によると言っただろう?』


(あれは、どうだろうか?聞いている限りでは単細胞生物としか思えないが。デカイ分オドも多そうだ。)


俺の頭にはかつて成すすべも無く破れたやつの姿があった。


『例えば、この鉱山に住むスライムとかはどうだ?』


『スライム? 

そのような下等なもので我が力図ろうとするのか……?』


呆れたような念話が飛ぶ。


『ただのスライムじゃあない。なんでも川のようなスライムだそうだ。

物理的な質量が大きければ、それなりに生命力も高いんじゃないかと俺は思うんだが?』


『生命力についてお前は誤解しておるな。

周りに纏っている物=生命力とは違うぞ。

あくまでその生命を統括しているコア力=生命力じゃ』


(なるほど)


『ちなみに、主は川のようなスライムと表現したな?』


『ああ、とんでもない質量のスライムだったそうだ。』


『ならばそれは単なるスライムとは違うぞ。』


『?』


『多分ヒュージスライムと呼ばれる変異種に違いあるまい。ごくわずかではあるが、長き時を過ごしたスライムはそのような変化を遂げることがある。』


『単に……でかいスライムって訳じゃないのか?』


『ああ。まずヒュージスライムと言う種は子孫を残さない。その個体本体のみが成長する。』


『…………因みに普通のスライムはどうやって子孫を残すんだ?』


『ある一定の大きさにまでなると核の魔石が2つに分かれる、それに合わせ身体も半分ずつに分かれるのだ。』


(細胞分裂みたいな感じか。)


『分裂しないゆえ、獲物を補食する度質量はどんどん増えていく。

そして長き年月を過ごした個体は、

時に湖や川のごとく大きな存在となるのじゃ』


(この世界に魔物研究の学者でもいればきっと興味をもつんだろうな)


『結局のところバルバレスは憑依できると思って良いんだな?』


『もちろんじゃ。ただ、そんなものに憑依してどうする?』


『ちょっと確認したいことがあって……ね。』

そう俺は呟いた。




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