バルバレスは語る

『さてと、契約を完全になしてしまうかの。』

その言葉と共に、バルバレスの存在がより身近に感じれるようになった。


そして左手にくっきりとした紋章が浮かび上がる。


『この紋章ってどこかで?』


『ガルダが勝手に我が身を模して紋章としていたと思うぞ』


(……もしかして?これって

ガルダから眷属を奪ったことになるのか?)


『儂はあやつの眷属になったつもりはとんと無いがの。あやつがどう考えるかは……知らん』


(こいつは恨まれるだろうな。)


『お主…………そこまで考えての行動では無かったのか……?』


『ちっとも……?』


『ワッハッハハ。面白い面白いぞ。いや~愉快愉快。あやつめどんな顔をするか見ものじゃわい。』


『眷属では無いとするとどんな関係だったのか?』


『都度都度の契約関係じゃ。

あやつが体内のオドを儂に与え、儂があやつの望むことを成す。それだけじゃ。』


(ずいぶんドライな関係だな……)


『儂ら精霊なんぞそんなもんじゃよ。土のちびを見てそう思わんかったのか?』


(確かにあいつは自由だ……。)

俺は思わず納得する。


『それはそうと、これからよろしく』


『おお。命短き者よ。』


『因みにバルバレスはいったいどんな能力を持っているんだ?

これからのこともあるし知っておきたい。』


『ふむ。儂の能力か……。』


『ああ。』


『普通は教えぬものじゃが……

まあ、良いじゃろう。


儂の能力は簡単に言えば『憑依』と『呪い』じゃ。相手に憑りつき、生命力を奪ったり時には意志を奪ったりできる』


(……)


『それって制約とか無いのか?』


『ある。 

基本儂は我より賢い者、精神力の強い者、生命力が強い者には完全に取り憑くことはできん。』


(強い力だけにやはり制約はあるか。

でも待てよ?と言うことは……

俺ってバルバレスより……)


『そうじゃの。まあそれ以前にお主の場合無防備に寝ておったから、非常に容易じゃったよ』


続いてのバルバレスの説明によると、稀に強者への憑依も出来ることはあるそうだった。


『因みに成功する時って何か共通点ないのか?』


『うむ。寝ておる時や弱っている時、気持ちが緩んでいる時とかが多かったかの。』


(それだ!)


『因みに、ガルダに憑依したことは無いのか?』

(ガルダ辺りに憑依して寄生できれば効率良さそうだが?)


『もちろん試みたことはある』


(あるのかよ……。しかも、もちろん……って)


『強き者が弱き者を食らうのは自然の摂理じゃろ?』


『成功しなかったのか?』


『まあな。あやつの方が儂よりちぃとばかし精神力が強かったでな。完全に支配は出来なかった。流石腐っても魔族じゃて。それ以来あやつと争うのを止め、対価としてあやつのオドを貰うことにした。』


『なるほど……。因みに俺を支配することを考えなかったのか?』


『ん?支配しておろうが?』


『それは心臓を抑えているだけだろう?』


『それで充分じゃわい。

知能がある動物を支配するのにはそれなりのオドを消費するでな。

大体お主のような者を完全支配するメリットがあると思うのか?

まだそこいらの魔物の方が価値があるわい。』


(わあ……無価値と言われちまった……)


『価値があるとでも思っていたのか?

保有するマナも涙程度、相手を切り裂く牙も爪も無い。体格は貧弱、深遠なる知識ももっておらん。そのどこに魅力を感じろと言うんだ?』


容赦ない言葉がバンバン飛んできた。


『なら、何故そんな無価値な俺と契約なぞ行ったんだ?』


『そんなの決まっておろう?』


『?』


『暇をもて甘しておったからじゃ。

気まぐれとでも言うかの?


お前に価値はないが、儂を楽しませてくれる可能性があったので話に乗ってみたんじゃ。


何しろ絶対集めるなんて無理だと思っていた

ホーンラビット18000匹分のオドをたった1日で調達しおったでの。

そんな輩がその人生でどんなストーリーを紡ぐのか非常に興味深いと思わんか?


人の一生なぞ、我らにして見れば一瞬。

お前で遊ばしてもらうぞ。』


(厄介な相手と組んじまった……)

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