たのもう
教会を出てすぐ、子供を見つける。
怖い魔女の住む場所を聞くとすぐに場所を指し示してくれた。
何でも、悪い事をすると魔女が拐いに来ると親から言われているらしい。
(なんかナマハゲと同じ扱いだな。)
と苦笑がでた。
指を指した方を見ると山の中腹にポツンと洋館らしき物が建っているのが見える。
(いかにもだな…)
村人が騒ぎ出す前にさっさと出て行くことにした。
◼□◼□◼□◼□
歩くこと2時間程度で古びた洋館へと着く。
「たのもう」
と大きな声でどなる。
(出てこないな?)
「たのも~う」
再度大声でどなる。
「?」
(なんだ出てこない?声が小さいか?)
「たのもーーう」
力いっぱいマナを乗せ、精一杯の大声をだして叫ぶ。
ビリビリビリ
窓ガラスが震える。
「バンッ」
と言う音とともにガルダが出てきた。
「なんだ?人が寝ているというのに。」
顔を真っ赤にして出てくる。
かなり怒り狂っているのが遠目にも分かった。
「お前は…この前の馬鹿じゃないか…。
アハハは我が身に膝まづき許しを請いにきたか。」
「いや?」
「ならば古の英雄と同じく、我と試合う為にきたか。正面から堂々と来るとは良い度胸じゃ。せいぜい楽しませてくれよ。」
「それも違うんだが。」
「ええい、じゃあ何だと言うのだ?」
「俺の行為で下の村の者に迷惑をかけたらしいので、代わりに請け負いにきた。」
「ふん何を勘違いしておる。500個はお主への罰じゃ。一個たりとも負けるつもりはないぞ。」
「その事では無く、村人への毎日のノルマだ。1日5個を10個にとか理不尽な要求をしたらしいじゃないか…。俺のした行為で俺に恨みを勝手にもつのは構わんが、村人へ無理難題はおかしいと思うぞ。」
「……命ごいではないと申すのか?」
「ああ。一括で村人分の魔石も合わせて集めてくるから、その分おれに上乗せしろと言っている。ただし毎日は5個のまま据え置け。」
「……………」
訝しげな表情とともに暫くガルダは考えこんでいた。
「何を企んでいる?」
「何も?大体俺の命をお前握っているんだろ?嘘をついて何か俺が得するか考えてみろ」
「ふん。そうだな。だが言い出した以上約束を違えるでないぞ。お前の蛮勇に免じ10日で2000個で手を打ってやろう。
どうだ?今なら妾の生涯奴隷となるのなら、その命助けてやっても良いぞ。」
そう言ってガルダはニタニタ笑った。
「一つ聞いて良いか?」
「交渉はしない。」
「まけろとかは言わない。ただ純粋に知りたいことがあるんだ。」
訝しげにガルダは頷く。
「なんじゃ申してみろ。」
「因みにホーンラビットの魔石2000個というのは、ガイアウルフの魔石何匹分だ?」
「なんじゃそんなことか…。400匹分くらいじゃ。」
「ガイアウルフのボス個体は普通の個体何匹分だ?」
「ふん、5匹分くらいじゃ。まあ、矮小な人の身、そのようなものを狙えばまず間違いなく命を落とすがの。」
「じゃあ、ダンジョンとかに生息する魔物…例えばゴブリンとかは?」
「ガイアウルフ10匹分だ。もうこれで良いだろう。そこまで言い切ったのだから、1日も期限を割ること許さぬと心得ておけ。もう行け。」
「もう少しだけ…聞きたい。」
「なんだ。そろそろ妾の堪忍袋の尾も切れるぞ」
「これを渡すので、もう少しだけ猶予が欲しい。」
そう言って俺はガイアウルフのボス個体の魔石をガルダに見せる。
「これは…」
「課された2000個とは別だ。」
明らかに目付きが柔ぐのが分かった。
「初めから、そのような態度であったなら、もう少しお前への対応も変わったのにな。で、何か聞きたいことがあるのだろう?」
「この魔石何に使うか知りたい。
それと2000個集めたあかつきには先の約束を果たすとの一筆が欲しい。俺に宿した精霊の名にかけてな。」
「妾の名では駄目か?」
「当事者では駄目だ。俺の心臓に巣くっている奴の名前でだ。」
「まあ、お主のような矮小な身で、精霊をどうこうできまい。よかろう。」
それを聞き、俺はガルダに魔石を渡した。
ガルダはいとおしそうに魔石を撫でる。
「お前に答えると言ったな。これは我ら魔族の飯じゃ。」
そう言って再度撫でた。
「口に入れて、バリバリ食うのかと思っていた。」
「そんな勿体無いことするか。まあ、量があればそうするのも吝(やぶさ)かでは無いが。お前が約束通り、持ってきたらそうするか。
さて、約束通り盟約を行ってやろう
『お前が妾の望む魔石を期日までに持ってきた場合』…」
「ちょっとまってくれ…」
俺は途中で遮る。
「なんだ?」
「そこは明確にホーンラビット2000匹分の魔力を有した魔石と言ってもらいたい」
ガルダは顔をしかめる。
「ふん、調子に乗りおって…
『お前が妾ガルダの望む魔石ホーンラビット2000個分の魔力を有した魔石を期日までに持ってきた場合、バルバレスの戒めより解き放つことをバルバレスの名により約束する。』」
ガルダがそう唱えると赤黒い光が俺の心臓の位置で光りそして消えていった。
「これで良いだろう。約束を果たした以上お前も約束を果たせよ。さっさと出ていけ。」
(言われなくてもそうするさ。)
そして俺はさっさと出ていった。
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