ウォンテッド
15分後
「ここにいます。」
そう言って神父が連れてきたのは、数人の村人と明らかに上等と分かる衣服を着た一人の男だった。
「いないではないか?」
「先程までここにいたのですが。」
「逃げられぬよう縛るなりしておかなかったのか?」
偉そうな男が神父を罵る。
「先ずはこの件をお知らせするのが第一と思いましたので。それにあの男は目立つ黒髪をしていた上、恐らくガルダの呪いを受けて弱っております。遠くまで逃げること叶いますまい。」
(やはりこれは呪いだったのか…)
説教台の後ろに身を潜め俺は推移を見守る。
「おい、神父。どこに耳があるか分かるまい。『ガルダ様』とお呼びしろ」
「村長の仰せとは言え、私も神に仕える身。卑しくも魔族に様付けなど…」
「勝手にしろ。ただこの不始末どうするつもりだ?場合によってはその旅の者の身代わりお前にして貰うことになるぞ」
「それは脅しですか?我が教会の信徒がいかに敬虔であるか村長も知っていると思いますが…。」
「まあ、良い。ここで神父と言い争う為に来た訳では無い。しかし、まいった…」
二人の会話から置いていかれた村人の一人がおずおず手を上げる。
「村長、どうしなさった?儂らも分かるよう説明してくだせぇ」
「馬鹿な旅人が、よりによってガルダ様のお怒りに触れおった。それによってガルダ様より罰が我々村人全員に下されることになったのだ。」
(俺だけにくだしゃ良いのに。陰険なやつだな)
「どのような罰でございますか?」
「ホーンラビットの魔石を今以上に納めよとの事だ。
これまでの1日5個から10個へその個数を上げられておる。
そして…だ。その男への罰として、今より10日間のうちに500個の魔石を用意するよう求めてきてらっしゃる。
代価はその男の命だそうだ。」
「なら、ほっとけば良いのでは?」
「その男が10日のうちに成し遂げられ無かった場合、呪いを他の村人へと移すと書かれてある。そして10日過ぎる毎にその個数の残量の1割を利子として取るとも書かれておるのじゃ」
(いわゆる悪質高利貸の十一(トイチ)ってやつか。)
「500個なんて無理じゃ」
「そうじゃそうじゃ」
(あの魔族…無理難題を吹っ掛けたもんだな。それより魔石500何とか集めないとな。あと10日か…。)
「その旅人の命を持ってガルダ様のお怒りを少しでも納めていただこう。
「そうじゃ、そうじゃ。その者にすぐ償わせよう。そして、魔石についてはお許し頂こう」
(こいつら…)
「兎に角、その旅人を捕まえなければ話にならん。皆のもの神父に人相を聞いた後、なんとしても捕まえるんじゃぞ」
その後俺は気配を消し、俺を捕まえる算段をしている彼らの後ろをすり抜け村の中へと向かった。
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