ガルダ

目が覚めて俺は唖然とすることとなった。


俺を起点として半径5メートルの範囲を壁が囲っていたのである。

しかも高さは20mはあった。


(確かにこれじゃ魔獣は入ってこれまい。


ただ……


どうやってここから俺は出りゃ良いんだ?


むしろ閉じ込められたの俺じゃないか?)


壁は俺のオーダー通り、足がかりとならないようにツルツルっになっていてる。


(折角作ってくれたものなんだけど……流石にオーバースペックだろ?)

ポロモを呼び出すことにした。


『ボロモ?』


『ガチャ』


(ん?)


『あーもしもし?ポロモ』


『ガチャ』



出ない……



『ポロモ?』



『留守~』



(留守っ答えているやん)

『オーイ』


『グーグーグーグー……スースースースー』



(寝てる……?)

はじめは嘘臭い寝息だったが、だんだん静かな寝息と変わっていった。


(タヌキ寝入をしていて、いつの間に本当に寝ちまったってやつか?

しゃあない。とりあえずの危険はないし、

こっちの都合ばかりで振り回すのも悪いか。)


俺も地面に横たわり寝て待つことにした。

初春の日差しが気持ち良い。


(そのうち奴も起きるだろう)


しばし、うつらうつらする。


『バコーン』

パラパラ


『バコーン、バコーン』


不意の大音響に目が覚めた。


(何があったんだ?)


立ち上がろうとしたところ、不意に壁の一部がサーッと粉のように崩れ、彼女が入ってきた。


(ケホッケホッケホッ……なんだこいつは?)

舞い上がった砂埃に咳き込む。


彼女が手を上げ左右に振ると風が吹き

一瞬でホコリは晴れていった。

(ただならぬ気配を感じるな。)


入ってくるなり、がっかりした表情を浮かべる。


「なんだい。薄汚れたヒューマンが一匹かい?予想と違ったね。」

そう言いながらも俺をじろじろ見た。


そう言われ、俺もカチンとくる。

(何者かは知らんが勝手過ぎるだろう。)


「人が寝ていたところにずかずか入ってきて、何だはなんだ。」

俺に文句を言われるなぞ思っていなかったのか

彼女はビックリした顔をした。


「あたしゃ、魔族だよ?」 

そう言われ、改めてまじまじと彼女を見る。


カラスの羽を纏めたらしい服を羽織り、小動物の骨で作られたと思われるネックレスをしている。パンツは何かの革のようだ。

(服装の趣味最悪だな。下手なパンク野郎も今時そんな服着ないぞ。後は……) 

良く見ると額から小さな角らしき物が出ているのに気がつく。

(確かに魔族っぽいな。でも、こちとらドワーフやら、オーガやら見ているんだ。今更魔族って言われてもな……)


「魔族だろうが何だろうが、人が眠っているのを邪魔する権利はないだろう?」

そう言い、俺はまた寝転び直した。


「あたしゃ、ガルダだよ?」


(ふーんガルダと言うのか……まあ、俺には関係ない。)


「知らないな。用が済んだならとっとと出ていってくれ。」

そう俺は言い切った。


「あんたね……」

そう言いつつ彼女は俺を睨む


「人の家の壁をぶち壊し、ずかずか入ってくる相手をお客様扱いする筈無いだろう?」

(まあ、家ではないのだがな)

どうにでもなれと俺は目を瞑った。

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