ミュルガが消えて暫く後、野営地の焚き火の最後の火が消えた。


辺りは暗闇に包まれる。シーンとしている中に聞こえるのは野生動物の遠吠えや、夜行性と思われる鳥の鳴き声のみである。


身体の麻痺は徐々に消えつつあるものも、まだまだ動けるまでには程遠い。


(朝まで無事生き残れるか……?)


ハハハ 


掠れ声が漏れた。


(しかし、またも騙されるとは……

俺も相当阿保だな。


でも今度は用心しておいて良かった……)


念のためドワーフ達の餞別金の一部を服の中に分けていれておいたのだ。

幸運なことに流石にのミュルガも着ている衣服類までは剥がなかった。


(でも、それも生き残れればの話だがな。)


『ワオーン』


近くで犬の遠吠えらしき声が響く……


(こっち来るんじゃない)


複数の気配を感じる。

息を潜め固くじっとなった。


どこからか

『ヒヒーン』と言う鳴き声と


馬の暴れている気配、それに時々

『キャン』 

という犬の鳴き声が聞こえた。


そして最後に

『ヒヒーン』

と鳴く嘶きが聞こえ、


そして、静かになった。



『ピッチャピッチャピッチャ』


『ガツガツガツガツ』


比較的近い場所から嫌な音が響く。


(どうか腹一杯になってさっさっと消えてくれ)

必死になって祈った。


その願いが通じたのか、腹がくちくなったのか分からないがやがて気配が次第に遠ざかって行くのを感じた。


(野生動物は食べる以上の殺傷はしないと聞く。なら、助かった?のか……)


そう思いホットするのも束の間、少し大型の動物の気配を近くに俺は捉えた……


(何故?…………。運が悪いな……

いや……

血の匂いだな……)


馬をくくりつけてある木と俺が今横たわっている場所は近い。


(俺が見つかるのも時間の問題か……?

生き残る為にはどうしたら良い?

考えろ考えろ考えろ……


ミュルガが気を変えて戻って来る可能性は?

まず無い……


身体が回復して逃げれる(戦える)ようになる可能性は?

まだ暫くかかるだろう……


どこからか通りすがりの旅人が現れピンチを救ってくれる? 

街道から離れたこの場所にまず現れるなんて筈は無い。)


それに今は深夜であった。あいにく俺達は追手が来ないと判断した時点で移動する時間を夜から昼へと移していた。


(そもそも旅人がいたとして俺を助けるなんてするだろうか?この世界じゃ知人ならまだしも、見知らぬ他人を助ける為に命をかけるなんて奇特な考えを持った奴はいない……。

まして俺には、その知人すら……いない。)

寂しさが急に込み上げてきた。


(ん?そうだ、人じゃないなら……)





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