役立たず……

狼が去った後、俺は木から降りた。

火をおこし、その灯りをもとにボス狼より魔石を抜き出す。


取り出せた魔石は3センチも満たないボンヤリとした赤褐色のものだった。


(苦労した割に魔石は意外と小さいな。それに色も薄い……。

オドの濃さと魔石の大きさにはやはり関係があるのだろうか?

もっとでかけりゃ、色々使い道も……)

ふと魔石の大きさ一つで不満を覚えている自分に気付き苦笑する。


(魔石以前に生き残れたこと自体を感謝しないとダメだな…。勝てたが本当にヤバかった……。

群で襲ってくる魔物は、最初に頭を叩く。出来れば遠距離から遠投げで……。これを徹底しよう。

生き残ること優先に……な。

オドによる肉体強化は無くとも遠当てであれば倒せるし。


ただ……まてよ?

それ以前に何故俺はこいつを倒せたんだ?

階位が上がったことで筋力が上がったのは分かる。でも、なんでこいつの姿を認識できたんだ?

戦いの最中色まで分かった気がする……

視力も階位で上がるものなのか?

今後とも検証が必用だな。)


とりあえず検証は後にすることにし、目の前で片付けなければいけない問題に集中する事にした。


(とりあえず、ボーラの重りを回収して……

そういやミュルガの奴、どこにいったんだ?)


その矢先後ろから気配がする。


ビクッとして反射てきにシミターを握った。


「おいっ、俺だ俺。」

見るといつの間にかミュルガが馬を引いて戻ってきた。


「今の今まで、俺に狼を押しつけてどこにいたんだ?」


「あぁ?押し付けるだ?お前言い方気を付けろよ。

お前がワンころと遊んでいる間、

気をきかして馬を避難させていたんだ。

遊んでいた訳じゃあねぇよ。

帝都までまだまだ足は必用だろうが。」


「遊んでいたって言うのか?これでも命がけだったんだぞ?」


「お前なに真面目に言っていやがるんだ?

こいつら推奨討伐ランクEの雑魚だぜ?

群れているから推奨ランクが多少上がるにせよ、せいぜいD止まりだ。

仮にもオーガ狩りをしていたお前なら普通瞬殺だろう?」


(ミュルガの奴、俺の実力見誤っているな……)

「俺の強さはダンジョン限定だ。理由は分からないがオドが少ない場所では、普通並みの力かそれ以下しか出ない。」

きっぱり言い切る。


「お前本気で言っているのか?」


俺は頷いた。


「マジかよ……。役にたたねぇ……」

ポツリ、ミュルガは呟いた。


(聞こえているが……)


◼️□◼️□◼️□◼️□


その後数度に渡り魔物と遭遇するも、

俺が戦力的に役に立たないことを裏付ける結果としかならなかった。


「まったく本当にDランク並みの能力かよ。

着けているミスリルの装備が泣くぜ……

もういい。お前戦わなくて良いから。

ただ荷物番だけはしっかり頼むな。」

そう言ってミュルガは一人だけで戦うようになっていった。


「勝手に期待して、勝手に失望するってどんなもんなんだよ……。

確かに今の俺が不甲斐ないのは分かるが……」


そしてその夜が来た……






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