勝ったど~

閃きと同時に俺は行動に移る。


(どいつがボスだ?)


少し離れた場所で体格の良い、毛づやの整った個体がいた。色も他の個体が黒であるのに対し灰褐色だ。


(こいつだな)


『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』

ミスリル屑を粉末状にした物をその個体に向け投げつける。


ギャン


と言う鳴き声と共にそいつは地面を苦しげに転げ回った。

(動物の姿をしたとて、魔物には変わりないか……)


その様子を見て、他のウルフの行動が一瞬止まる。

(予想通り統率する個体が潰されると、全体的に動きが止まるな。)


俺はその隙を逃さず……




逃げ出した。

(アバヨ~)


そして目星をつけておいた木に必死に登る。


(お前らが木に登れないのはすでに承知ずみさ……)


やっとのことで復活した

ボスがギャウっと吠える。


それを期に一斉に俺のいる木に向かって

ウルフ達は走り出した。そして木を囲むとうろうろ周りをまわり始めた。

(そういや似たような展開があったな~)

デジャビュを感じる……


(あの時はどうしたっけ……?

あの時は……)


考える余裕が出来たもののウルフ達は一向に立ち去る気配がない。


(獲物が俺以外ないのか?

前回は馬が身代わりになってくれたっけ。

そういや……乗ってきた馬はどうしたんだ?


今はそんなこと考えても仕方ないか。

とりあえずこいつらを何とかしないと。


ミスリル粉はさっき使ってしまったし……

あとあるのはボーラとシミターか。


よしっ。猿蟹合戦と行こうじゃないか。人間様(猿)の恐ろしさをたっぷり味合わせてやる。)


そう考え、俺はボーラをバラし始めた。


バラした紐で身体を木に固定し、

石を手に構える。 


そしてボスに向け石を投げつけた……





ぐちゃ……

嫌な音が響く。


グリーンヒット


あと石は一個か。

(ボーラの重り部分、石3つにしときゃ良かったな。)


そしてもう一回構える


(待てよ……?

ボスが動く気配が一向にない……ぞ?

なら試しに……)


『オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


腹の底から声を出し威嚇した。

突然の俺の行動に驚き

ウルフ達はボスに指示を仰ぐべく見る


ただ、ボスは

ピクリとも動く気配がない。


そして……


もう一度

『オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』と俺は吠えた。


彼らは散り散りになると我先に逃げ出していった。



(勝ったど~)






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