仇敵?
順調であった俺たちの旅はそこまでで、その翌日俺たちはガイアウルフの群れに囲まれることになった。
焚き火をしての野営ということもあり、多少気を抜いていた為初動が遅れる。
取り敢えず焚き火の薪を手に持ち左右に振るが一向に怯む気配を見せない。
「どういうことだ?こいつら何故火を恐れない?」
「魔物だからに決まっているだろうよ。
隼人、サクサクっとこいつらやっちまってくれ。お前なら簡単だろう?」
(簡単って他人事みたいに言いやがって…。
1,2,3…7匹ほどの群れか。囲まれるとヤバいな)
火の棒を片手にそろそろと後退し、袋からシミターを取り出す。
俺を第一の標的と見定めたのかウルフ達が迫ってくる。
(こいつら狂犬病もっていないだろうな?)
オドを吸い込みマナを回そうとして気が付いた。
(オド(魔素)が殆んど無い…)
オドを利用しての闘い方が身に付いてしまっている為、一瞬パニックになりかける。
「おいっ後ろっ」
ミュルガが言ってナイフを投げる。
背後より攻撃をしかけようとした一匹が
キャンと鳴いて飛び退いた。
(やばい。使えるのは…
バックスタブや気配消しは不意打ちにしか使えないし、魔法はマナが足りないから無理…)
(っと…)
考える間もなく前後左右から交互に攻めたてられる。
(階位が上がったおかげで何とかこいつらの動きを避けることは出来るが、このままだとじり貧だな…。ミュルガと連携して…
そういや奴はどこだ?)
ふと気付き、横目でミュルガを探すも見当たらない。
(ウルフが俺に注目している間に逃げおおせたのか?良く逃げられたな…)
そこで俺は気付く。
(シーフの気配消しは加護だ…。
そして俺のはなんちゃって気配消し…
差が出るのは当たり前…か。)
注意が散漫になったのが分かったのか、ここぞとばかりにウルフは攻め立てて来た。
(いかんいかん。目の前の状況に集中しないと。兎に角、今は一人で何とかこの場を凌がなけりゃならないってことだ。)
腹をくくる。
(考えろ考えろ考えろ…
奴らの武器は牙と爪。ヒット&アウェイを基本として、周囲360度から波状攻撃を仕掛けてくる…。幸い相手に魔法は使えない。
俺の武器はシミターと腰に付けたボーラ。シミターのリーチの方が奴らのリーチより長い。
状況は多対一。この状況が不利を招いている。今俺に援軍は無く、魔法も使えない。)
そこまで考え
閃いた…
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