ほいほい

◼️□◼️□◼️□◼️□

寝ぐらに戻り飯を掻き込む。

(今日も色々あったな……)



寝床にいき空いてるスペースに身を横たえ

うつらうつら

魔法について考えた。


魔方陣を使って発動する方法は所謂(いわゆる)既製品。イメージだけで発動する方法はハンドメイドだ。


ハンドメイドは個々の職人の技量によって、ばらつきが出るのは仕方ない。

その代わり自由度は高いと言ったメリットもあったはずだよな。

先ずは技量を高めよう。俺がイメージをしっかり持てるようになればコントロールも可能になる筈だ。



待てよ……

そもそも、風ってなんで吹くんだっけ?

そう考えている間に、俺はいつしか眠りに落ちていった。


◼️□◼️□◼️□◼️□


朝日と共に目が覚め、時間があったので『風』について考えることにした。


(風の吹く原理は色々だった筈だ。


なんとか昔覚えた知識を引っ張りだす。


一つ目は確か……『息で吹く』など物理的な力で空気を動すことによって起こる風だ。


二つ目は上昇気流のように、暖かい空気と冷たい空気が混じり対流が発生することにより生じる風。


そして最後が、高い気圧から低い気圧へ空気が移動することによって生じる風だったはずだ。


魔法を発動する際イメージしやすいのは一つ目の風か?

ただ、力づくである分効率は悪そうだ。


二番目は熱源がない。


だとしたら三つ目の風を再現することはできないだろうか?


そもそもどうやって気圧をイメージをすれば良いんだ?

気圧は要するに空気の密度だよな……


敵の前の空間から一気に空気が抜けてくイメージはどうだろう?)


なんとなくいけそうな気がする。

そう思った俺は練習場(ゴブリンホール)へと向かうことにした。


◼️□◼️□◼️□◼️□


ゴブリンホールの手前で索敵する。


『今日は15匹か……』

気配を殺し、ゴブリンどもの死角から忍びよる。


いつも通り3匹を瞬殺し、モードチェンジ後片っ端から殲滅する。


殲滅後魔石を手早くかき集め、秘密の小部屋に戻った。今回の目的はあくまで実験である為、オーガ部屋には行かない。


部屋に魔石を置き再び再びゴブリンドームへと向かう。気配を消し、入口付近の壁際に潜む。

暫くすると、ゴブリン達の死体がゆっくり床に沈み込んでいくのが見えた。

(ダンジョンが死体を吸収するとは聞いていたが、ナイフや棍棒などの無機物も吸収されていくんだな……)


待つこと20分位、ホールの壁に開いているひび割れから、一匹、また一匹とゴブリンが這い出てくるのが見えた。


全部で五匹か……。

うち二匹は反対の出入口に向かって走っていった。


残り二匹はじっと走っていった二匹を見つめている。


最後の一匹は出てきた穴付近でたむろしている。


「???」 


(こいつら何をやっているんだ?)


それから30分ほど観察をしたが、何も起きない。


(どういうことだ?)


突如穴付近で待機していた奴が


『ギィヤァ』

と突然叫んだ。


(ん?)


その叫び声を合図として、穴からぞろぞろとゴブリン達が這い出てきたのだった。


(そうか。こいつら、もしかして斥候か?

危険が去ったか確認する為に出てきたのか。


前回俺はその斥候に食いついて窮地に陥った訳だ。


でもこいつら何故あっちの入口だけ見ているんだ?)


………………


突然ひらめく。

(そうか!! あっちの方角には、天敵(オーガ)だ!!)


念のため10分ほど潜んだ後、再度殲滅行動に入った。

殲滅後ゴブリンから魔石を抜き取る作業にかかる。


いくら醜悪な顔をしているとは言え、人形(ヒトガタ)の魔物から魔石を取り出す作業は未だに慣れることはない。


濃緑で悪魔のような面構えであったとしてもだ……。

(ゼリスに野蛮人と言われても仕方ないな……。)

と苦笑した。


魔石を置きに部屋へ戻る。暫く後ゴブリンルームへ戻ることにした。


(予想ではそろそろ斥候が出てくる頃だな。)


肝心の魔法の実験がまだ出来ていない。


ゴブリンルームに入り気配を消す。

壁に寄りかかり暫くの間目を瞑った。

『索敵』だけは発動させておく。


予想通りまた五匹ほど顔を出し、そのうち二匹が反対側の入口に向かった。 

残りの三匹はさっきと同じポジションにいる。


取り敢えず……まず片付けるのは

巣の中への連絡役だな。


ゆっくり息を吸い込み、オド(魔素)を体内に取り込む。そしてマナ(気)を活性化させる。


『ゴブリン前面1立法メートルの空気が一瞬で空になる』

そう想像し、空間のオド(魔素)に向けマナ(気)を放出、


『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』

とワードを唱えた。


その瞬間


『ジュッポ』


音と共にゴブリンが前につんのめって出てきた。


ゴブリンに向けて風が吹いたようには見えなかった……


(なん……だ?

この光景とあの音……


どこかで見たような……


妙な既視感(デジャヴ)がする……


なんだったか……

…………

…………


不意に思い浮かぶ。


あ、あれだ!!


ゴキブリを掃除機で吸い込まさせた

あの感触……


そういや掃除機の原理って、ファンで工的に低い気圧を作り、ゴミを吸引するんだったな……)


俺は早速この魔法の名前を『ゴブリンホイホイ魔法(マジック)』と名付けた。


(でも、いったいこの魔法……何に使えるんだ?)


一瞬この考えが頭を過る。


(ダメだ。ぼんやり考えごとなんてしている場合じゃない。

魔法の使い道については後で考えよう。

今は目の前の敵に集中、集中……)

と意識を戦闘に戻す。


何が起こったのか分からず、呆然としている連絡役のゴキブリいや、ゴブリンをまず狩った。

『ギェッ』と声を上げ倒れる……。


連絡役のゴブリンが倒されたことに気付いたのか、残りの四匹が一斉に向かって来た。


ここでまた疑問が過(よぎ)る……


(なぜこいつらは巣穴へ警告を出さないんだ?

仲間を呼べば数的優位に立てるのに……

もしかして与えられた役割以外の行動は出来ないのか?)

疑問は一時置き、目の前の敵に集中する。


取り敢えず先に俺に到着した二匹を武術で瞬殺する。反対側の入口近くにいた二匹は魔法で迎え打つことにした。


オド(魔素)を取り込みマナ(気)を活性化し、

再度洞窟内に溢れているオド(魔素)に向け発出。

イメージは、『台風によって吹き飛ぶ看板(あれ)』だ。


『ヴィーダ·ベーダ·マーナ』


ワードと共に魔法は発動し、強風が相手に向かって吹いたのが分かった。


体重の軽いゴブリンは煽られ、吹き飛びそうになった。いや、一匹は耐え切れず実際壁に叩きつけられた。


(殺傷力だと炎系なんかに比べるとやはり落ちるな……。しかもでかい相手だと足止め程度にしかならないのか。

それが分かっただけでも習得があったな。)


残り二匹をサクッと狩り魔石を抜いた後、俺は今日のノルマを済ますことにした。



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