第3話

状況は一瞬で理解できた。

「…すみません」

だから謝罪の言葉はすぐに出てきたけど。

「構わんよ。今日の授業の内容を、明日までにわかりやす〜くレポートにまとめてくれたらね」

世の中そんなに甘くはなかった。


「あっはっはっはっは!」

「…うるさい」

最悪な気分だ。

数少ない友達が大笑いしている横で、私は大嫌いな操魔学のレポートを書いている。

ただでさえ眠くなる科目がお昼の後というのが間違っているのだ。先程の嫌味な顔が目に浮かぶ。そもそもお前の授業がつまらなくなければ…!あの声には睡眠魔法を織り込んでいるのではないかと、私は本気で疑っている。


「いやー、気持ち良さそうに寝てたねぇ。いい顔してたよー」

「うるさい」

「普段からあんな穏やかな顔してたら、もっと友達もできるだろうに」

「…うるさい」

余計なお世話だ。それに私はそんな顔していない。知らないけど。


そんな事より私は忙しいのだ。あの教師のことだ、下手な出来のレポートなんか出したらまた嫌味を言われるに決まっている。

授業の内容はこいつに貸してもらったノートで把握した。未だにニヤニヤ笑っているのは鬱陶しいが、まぁ、少しは感謝してもいい。


溢れる怒りに任せた結果、既に半分ほどは出来上がっている。私にしてはよく出来ている。横からちょくちょくお節介なアドバイスをしてくる奴の功績も、なくはない。

ふと窓の外を見ると、緑色の太陽がもう傾き始めていた。上級生はまだ飛行魔法の訓練を行なっている。

疲れた。少し休憩だ。

傍のランプを杖で小突き、灯りを灯した。


「あれ?さっきぐっすり寝て休んだのでは?」

「…ほんとうるさい」

そんなささやかな休憩、今しがたの大奮闘でとっくに打ち消されている。

それに、寝たといってもあまり休まった気はしない。なんだか変な夢を見たのだ。

「変な夢?どんな?」

「夢から醒めた」

「夢の中で?」

「そう、夢の中で」


「それから?」

「それから…」

たしか、最初は普通の日本みたいな場所だったのだが、いつの間にかファンタジーのような展開になっていた。

「まぁ…後は別に面白くもないよ。普通の夢」

よくわからない場面転換など、夢ならばよくある事だ。夢に整合性なんて求めても、


「あれ…」


「ん?どうした?」

今、何か変な事が起こった。

「何が?」

日本って、なんだ?

「 日本は日本 だ ろ」

あれ?そ うだっけ ?

「 そう っけ ? 」

でも あ 、こ こは ?

見 れ ばわ か でし ょ ?



空 に は海 が浮 び、緑 の太 陽が れ を照 らし て た 。

私 は こ 奇 妙な 景 が 夢 だ 気 い




そこで、目が醒めた。

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