第2話

「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!」


乱れた呼吸を整えるのにしばらくかかり、ようやく一息ついた頃に俺は気付いた。


あぁ。夢か。


自分の悲鳴で目を覚ますなんて、いつぶりだろう。少なくとも高校を出てからはなかったはずだが。


ギシギシと軋む体を起こすと、シーツは汗でじっとりと湿っていた。悪い夢の原因はこれか。昨夜はやけに暑かったからな。


窓を開けて寝ればよかったのだろうが、そうすると外を走るトラックの音がうるさい。

本通からやや離れたこのマンションが面した道は、朝の混雑を回避する絶好のルートらしい。お陰で俺は健康的かつ強制的なお目覚めを約束された毎日だ。クソったれめ。


我が物顏で走るトラックを呪いながら冷蔵庫を開ける。とりあえず喉が渇いた。水が欲しい。

ボトルに入れておいた水をコップに移して、一気に飲み干した。徐々に目覚めてきた頭と体をほぐしながら考える。


「今朝の夢は…なんだったんだ?」

すでに結構忘れ始めてはいるが、いやに暗い夢だった。この暑さが見せた悪夢…ではあるのだろうが、それだけであんな夢を見るとは。

悩みやトラウマが悪夢になるというのはありうる話だが、心当たりはない。それとも自分ですら気付いていない悩みでもあるのだろうか。


そんな事を考えている内に、もう出かける時間だった。早く出発しなければ。

最低限の荷物を背負い、俺は小屋を出た。物陰に隠れながら慎重に進む。考えるほどに焦燥感が募るが、決して焦ってはいけない。すぐに奴らに見つかって、殺されてしまうだろう。


俺は地下通路を抜け、王国へ向かう。既に多くの建物が崩れ、人の住む気配は全くない。動乱の中で逸れてしまった仲間たちは無事だろうか。考えるだけで胸が締め付けられる。

炎に包まれた街の中で、解放軍は宙を舞い俺を付け狙う。恐怖を、怒りが踏み倒す!ここは俺たちの街だ!俺たちが誇りをかけて守った街だ!奴らの自由になどさせるものか!俺は剣を抜いて顔を上げ、




そこで、目が醒めた。

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