そこで、目が醒めた。
@aki89
第1話
気がつくと、僕は鬱蒼とした森に囲まれていた。
見たこともない場所だ。
色彩のほとんどない暗い道と、それを挟むように生い茂る木々の群れ。道はどこまでも続き、森はどこまでも広がっているようだった。
木々の高さは頭上を覆うほどではないが、代わりに分厚い雲が空を埋め尽くしている。暗い日中なのか、それとも少し明るい夜なのか、それすらもわからなかった。
それが当たり前であるように、僕の足はひとりでに動き出す。光はほとんどないが、何故だか足取りに迷いはなかった。
歩けど歩けど景色は変わらない。僕は何処へ向かっているのだろう。そもそも本当に進んでいるのだろうか。
何もかも分からない状態のまま、それでも僕は不思議と穏やかだった。恐怖も、焦りも、不安もない。この森は僕を受け入れてくれる。いや、むしろこの森は僕そのものなのかもしれない。僕だけは、僕を拒絶したりしない。僕だけは、僕を苦しめたりしない。僕だけは。僕だけは。
何故だろう、なんだか息苦しくなってきた。心臓が苦しい。暗い森は、何も変わりはしないのに。
いや、違う。森の中に何かがいる。姿は見えないがわかる。僕を嗤っている。嗤っている!みんなが僕を!僕を!
ああ!やめろ!見るな!こっちを見るな!心臓が!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!
「やめろおおおおおおおおおおおお!!」
そこで、目が醒めた。
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