1-2
「な、成る程ね?」
顔中を引きつらせながら
──空腹を覚え、首から療養者証を下げて備え付けらしいスリッポンのような靴を引っ掛け、恐る恐るエンの言う通りに歩いてみれば、扉を出た途端にそれは目に飛び込んで来たのだった。
角だ。角が生えている。額から曲がりくねった角が生えた、身の丈が耀の倍以上はありそうな大男がのっしのっしと目の前を横切って行った。驚愕に固まっていると、灰色のローブを着た若い女性が慌てた様子で大男の方へ走って行く。
「カーターさん、カーターさん! お薬忘れてる!」
『カーターさん』と声をかけられた大男は、ゆったりと立ち止まってゆったりと振り向くと、ドスの効いた声でぶっきらぼうに「おう」と返しながら女性が手に持っている袋を手の平で受け取った。女性は笑って声をかけながら大男に渡すなどしていたが、女性の両手の平に収まるくらいのサイズのその袋が、大男に渡れば指先で摘む程度の大きさしかなく、遠近法か何かが仕事を辞めたのではと耀は何度も目をこすっては
すると女性が耀に気づき、柔らかな笑顔を浮かべ会釈する。脊髄反射で会釈を返しながら耀もまたあることに気づく。女性の耳が、やけに長い。と言うより尖っている。ローブを翻しその場を後にする女性を見送りながら、顔中が引きつって行くのを感じながら、耀は先のように呟いたのであった。
あまりの衝撃にそのまましばし呆然としていたが、やがてハッと我に帰り、
「もしかして……ここ、ワンチャン
真剣な表情でそう言うと柏手ひとつ。辺りを見渡して、角の大男が出て行った方へ大股で歩き出した。間も無くこの施設の出入り口らしき大きなガラス戸が見える。外には何やら木々や草花が見え、ビッグサイトってこんな緑豊かだったっけ? なんて思ったが錯覚だと言い聞かせながらバタンと勢いよく飛び出す。しかし、踏み出した足は数歩先で早くも止まった。
地面は大小色味様々な石材を組み合わせ幾何学模様を描くモザイクアートの石畳、目の前には立派な噴水が据えられた円形の広場があった。噴水の周りのベンチには老夫婦が腰掛けて談笑し、若者の一団が騒がしく通り抜けて行く。平和な日常の一幕に見えて、しかし彼女の眼に映る人々の姿はどう見ても時代錯誤と言うのか世界錯誤と言うのか……精緻な刺繍の施されたローブを身に纏う老夫婦の側には真鍮の球体が浮かび、時々カラフルな光の玉を放っている──ドローンだと言い切るにはプロペラの類が見当たらないが、あれはどうやって浮いているのだろうか──また、先ほどの若者達の一人が手に持っていた袋の中から真っ黒な何かを取り出し投げ上げると、何処からともなく飛んできた鳩ほどのサイズの真っ赤な鳥が見事にキャッチした。すると若者達は火がついたように騒ぎ出す。
「おいバカ何急にやってんだよお前!」
「そうは言っても時間決まってっからさぁ」
「声かけろって何べん言わせりゃ気がすむんだお前は」
「あー、ごめんごめん」
「心臓に悪いんだからもう……」
周りから非難を浴びる、袋を持っている青年の頭の上に止まったその赤い鳥──ではなく翼の生えた赤い子猿だった──そいつは前足に自分の頭よりも大きな生きた蜘蛛をしっかりと捕まえ、8本の脚を目にも留まらぬ速さで束ね、蜘蛛の頭部をガブリと噛み砕いた。青年の仲間の一人が悲鳴を上げながら距離を取る中、赤い猿は、数度の痙攣の後絶命したらしき蜘蛛をガツガツと食っていた。
周りを見れば見るほど、そもそもおぼろげだった仮定がほどけて意味を無くしていく。ここは一体何なんだ──吹き過ぎる風が広場の周りを囲む背の高い木々を揺らし、葉擦れの音が喧騒と混ざってノイズと化しては遠のいて行く。最早呆然と立ち尽くしていた耀は、ふと、近くを歩いていた若い女を視界に入れると、ハッとして声をかけた。
「あ、あの、すいません」
「……はい?」
頑丈そうな革の胸当てやガントレットを身につけたその女は、立ち止まりはしたものの声をかけて来た人物の出で立ち(白い寝巻で頭には包帯)を見るなり眉根を寄せた。
「ここって、その、コス……なんて言うか、普段から、こういう格好なんですか?」
「……あなた、大丈夫? 一度先生のところに行った方がいいんじゃないかしら」
「あ、ちがっ、そういうんじゃなくて……えっと」
こちらをじっと見つめる、冷たい声音の女を前にしどろもどろになる。ふとした拍子に手に触れた療養者証を、それに縋るように引っ掴むが、事態は悪化する。焦って俯く耀に、女はこう言った。
「ねえ、あなた。魔法使ってみなさいよ」
「……へ?」
先程までの不審者を見る表情から一転、口の端を微かに上げ、嘲笑にすら見える薄ら笑いを浮かべて女は「魔法」と繰り返した。
「誰でも得手不得手があるのは知ってるわ。だからなんでもいいから」
「え、あの」
「そうよね、あまりにも脈絡が無くてごめんなさいね。でも実はこれはけっこう大事なことなのよ。ひとつ、パッと使って見せてくれれば終わるから」
さあ、と急かす女。気圧されてじわりと後退りしかける耀に、女は更に追い討ちをかけた。
「あら、まさか、使えないなんてことは無いでしょうね」
じわじわと首が絞まるようだった。魔法なんてどう使えばいいのか見当もつかない。だがこの調子では、魔法の使えない余所者は歓迎されずこっぴどい咎を受けるに違いない。薄々予感していたことが現実になりかけていた。今すぐにも逃げ出したかったが、いったいその先何処へ行こうというのか。
その時、女が耀の目の前に突如ナイフを突きつける。驚いて後退りしようとして──「〈
「
辺りがザワついて、一瞬にして何十という視線が耀を捉えては包囲網が完成した。「黒鉄族!? マジで?」「一体何処から?」「悠静院は一体何をやっているんだ?」「怪我しているフリして忍び込んだとか」「ひえー怖……」「あれ本当に黒鉄族なの?」「人間にしか見えないよね……」「騙すことに関しちゃ一級らしいからな」「行こうよ、巻き込まれるって」距離を取る者、中には武器らしきものを取り出した者もいる。
「う、そ……なんで」
動くこともままならず、泣きそうになったその時であった。
「はいはいストーーーーーップ!!!!」
何処かで聞いたような喧しい声と共に、耀と野次馬の間に緑色の閃光がピシャリと落ち、野次馬は悲鳴を上げて散って行く。その隙間から走り抜けて来たのは、同じ灰色のローブを纏った凸凹な2人組だった。名前はなんて言ったか、ツンツンの茶髪の背の高い少年は耀の目の前へ立ちはだかるように躍り出て、藍色のおかっぱ頭の小柄な少女は耀のすぐ傍らに片膝をついた。
「どーせまた黒鉄族がどーのこーのって騒いでたんだろ! 知ってんだかっ、ら!?」
野次馬をビシッと指差す少年の叫び声は、少女にローブの裾を思い切り引っ張られて中途半端に裏返る。
「なんだよ!」
「…名乗り」
「あ、成る程」
短い指摘に軽く頷いた少年は、ローブをわざとらしく翻して野次馬に向き直る。するとどういうことだろうか、今まで全くの無地であったローブの背面に、銀色の燐光を放って模様が現れた。それは三日月と翼。療養者証に描かれたものと似ているが、あれと違って、翼は今に飛翔せんとするばかりに大きく広げられていた。
「レストレア
「…同じく、リム・エレステッド」
「この子はなぁ、えーと、そうだ、特級保護対象だ! ただの患者さんじゃねーんだぞ!」
「…彼女は失せ物の森にて保護されました…軽度な体内魔力の汚染…が、確認されています」
「おい」
野次馬のざわめきがその色味を変える中、茶髪の少年、ゲツェットはナイフを構えていた女を鋭く呼び止めた。
「な、なによ、月翔隊は怪我してりゃ黒鉄族まで助けるっての?」
「だーかーらー! 黒鉄族じゃねーって言ってんだろ!」
「う、うるさいわね! 見てごらんなさいよ、魔力をこれっぽっちも感じないのよ? そいつの何処が黒鉄族じゃないって言うのよ!」
「それは! それ、は」
するとリムが突然立ち上がり、急に歯切れの悪くなったゲツェットをぐいっと押し退けて言う。
「…軽度の体内魔力汚染、の為、一時的に魔力の活動を低減させる、処置してます」
小柄なリムは必然的に女を見上げることになるのだが、素なのか否か、ギロリと睨む翡翠色の瞳は何処となく殺意を滲ませていた。癖なのだろうか、妙に途切れ途切れな話し方にすらそれが現れているようだった。
「…汚染の除去、と、同時進行なので、安静にしているよう、言ってあったのですが、ご覧の通り、彼女は今、とても不安定な状況、です」
「あ、あらそう! そ、それはお邪魔したわね!」
斜め下からじわじわ詰め寄るリムと矛先を変え始めた野次馬の視線に耐えかねたか、女は脱兎の如く逃げ出した。「あ、コラ待て!!」とゲツェットも即座に後を追い、場に残ったのは、放心状態の耀と女が逃げて行った方をじっと睨むリム、なにやら気まずそうに散り始める野次馬、それから、
「あーあ、こーりゃまた派手にやったなー」
ポケットに手を突っ込んでダラリと立つエン。いつ現れたのか、一切気づいていなかった人々は残らず驚きにざわめいた。
ややあって野次馬がそそくさと退散し大方誰もいなくなった辺りで、エンは耀を振り返って「よっ」と軽く手を挙げ、その側にしゃがみ込んだ。
「あ、あの」
「言いてーことはー色々あるだろうけどちょーっと待て」
足元を見下ろすなり「『影縫い』か」と呟くと、エンは耀の両足を数回ずつ軽く叩いて言った。
「よし、立てるか?」
「……へ?」
耀は自分の足を持ち上げ、上がった拍子に「ふぁ?」とすっとぼけた声をもらした。糊か何かが敷かれてた訳でもないのに地面に貼り付けられたように動かなくなった足が、軽く小突かれただけなのに自由になった……
それこそまさに魔法のように。
「やっべえ」自分の足を凝視して耀は微かにこぼす。自分の持つ手札がいよいよもって何ひとつ動かせなくなった、そんな気分だった。
と、目の前に小さな手が差し出されていることに気づく。リムだ。
「…部屋、戻ろ?」
先程までの剣呑さは何処へやら、翡翠色の目はただ静かに耀を見下ろしていた。
「え、あの」
「…大丈夫。私達は、貴女の、味方」
「味方」
「うん」
「あの、その、くろナントカって……」
「あーそりゃちげーからよ」エンが割り込む。
「違うの?」
「おーよ。ぜんっぜん。あの女はーちっと鈍過ぎだ」
「……マジで」
「まーな。なんならー後で調べてやってもいいぜー」
「し、調べて! 調べてください!」
「お、おう……」
這って行っては懇願する耀にエンは半歩下がる。リムは耀の目の前にストンとしゃがみ、再び手を差し出した。翡翠色の目が、真っ直ぐ静かに耀を見つめて来る。
「…もう大丈夫。私達は、貴女の、味方」
「あ……あ、ありがとう……」
不意にじわりと熱くなった鼻柱を片手で抑え、もう片手で握り返したリムの手は、小さくて温かかった。
***
「で、結局あの女の人はどうなったの?」
「おっ、聞いちゃう? オレの武勇伝聞いちゃう?」
「…
「オマエさぁ」
背の高い茶髪の少年の名前はゲツェット・ヴェルフェレム、歳は18、好きなものは肉料理と運動。小柄な藍髪の少女の名前はリム・エレステッド、歳は17、肉料理も運動も苦手だが、薬草の扱いは同年代で頭一つ抜けていると自負している。凸凹な2人組だが、このフォーガという国において人命救助の第一線で活躍する「レストレア月翔隊」では男女最年少同士で度々バディを組んでいるという。
ちなみに先の騒動を引き起こした女は、ゲツェットに追い回された挙句巡回中の治安維持組織「
「…隊長が、ちゃんと説明して、くれたから」
「そ、そう、だからアイツはちゃーんと説教されてたぜ。オレのお陰でな!」
「…はいはい」
「オマエさぁ」
悠静院の食堂にて夕飯をいただきつつそんな話を聞いた耀は、互いに茶々を入れつつ話を締め括ったゲツェットとリムをぼんやりと見ては問いかけた。
「2人って、学生なの?」
「んー、違うけど」
「えっ! そうなの?」
サラリと返したゲツェットに耀が驚いていると、リムが言った。
「…アカルは?」
「え? えっと、まあ、うん。学生……ではある、というか……」
揃った前髪の下、リムは眉根をひそめる。
「…じゃあ、なんで『失せ物の森』なんかに?」
「いやそれはマジでこっちが聞きたいぐらいよ。なんで一介の高校生があんなおっそろしい場所に放り込まれなきゃなんないのって」
「オイちょっと待てよ」ゲツェットが神妙な面持ちで言う。
「そういや隊長言ってなかったか? その……記憶がなんとかって……」
ゲツェットとリムはハッと互いに顔を見合わせると、揃って椅子から身を乗り出しては耀の手を引っ掴んだ。
「なあアカル! オレ達に出来そうなことがあったらなんでも言ってくれ!」
「…協力、する!」
掴まれた勢いで木のフォークを取り落とす。右のゲツェットの大きな手は握力は強いがしっかりと支えているようで、左のリムの小さな手は温かくて優しく、震えてすらいる。素性などカケラも明かしていないというのに──耀は2人の熱意のこもった視線を受け止め切れずに俯いてしまう。
「あ、アカル? どうした?」
ゲツェットが覗き込んで来る。耀が言葉を探している内に2人は不安げに席に着こうとするが、離れかけた指先を耀が咄嗟に掴んだ。
「ねえ」
もう一度2人を見上げる。
「その……2人に、お願いがあるの」
ここでは話せないからと食事を済ませて移動した先は、耀が目を覚ました悠静院の居室。部屋に入るなり耀が椅子をベッドの側に引っ張って行っては座り、「2人はこっち」とベッドを示す。小首を傾げた2人だったが、やがて大人しくベッドに腰掛けた。
「えっと……お願いっていうのは、あたしの話を聞いてほしいっていうのと、この話は誰にも内緒にしておいてほしいっていう2つ」
「それはー俺にも内緒かー?」
ザザザと全身が総毛立った。耀から見て真正面、リムとゲツェットの背後に、エンが胡座をかき頬杖をついていた。リム達は揃ってベッドから耀の側へすっ飛びその腕や椅子にしがみ付いた。
「フッ、揃いも揃っておもしれーツラしやがってよー。笑かすな」
目を細めニヤリとほくそ笑むエンに、目を丸くして硬直する3人。数拍してやっとゲツェットが口を開いた。
「たっ、た、隊長こそ脅かしてんじゃねーよ! その瞬間移動心臓にわりぃからやめてくれって言ってんじゃねーかよ!!」
「アッハッハ、やーだ」
「ええ……」
ゲツェットとリムは溜め息をつく。が、耀はまた別のことに驚いていた。
「隊長? ……エンが……何の?」
「お? 言ってなかったっけかー?」
そう言ってエンがウエストバッグから取り出したのは、灰色の布地。手のひらほどの幅の長細いそれを左上腕に巻き付けると、それは独りでに固定され、突如銀色の燐光を放って模様を浮かび上がらせた。上向きの三日月に羽ばたく翼の紋章──耀は気付く。先の騒動の最中にゲツェットが見せたものと同じだ。
「レストレア悠静院院長、兼、月翔隊隊長、兼、暇人。それがー俺だ」
「…意外と色んなところに口の利く人、らしい」
リムがボソッとこぼすとエンは「意外たぁなんだー」と鼻で笑った。
「まーそういうわけだー。頼りたきゃー頼んな……で、だ」
エンの顔から薄ら笑いが消え、3人は話が逸れていたことに気付いた。
「アカル。『秘密の話』とやら、聞かせてーもらおうじゃねーの。俺だけには内緒ーだなんて水くせーことは言うなよー?」
耀は俯いた。突然のエンの登場に、必死で用意した語り出しは完全に飛んでいた。そもそも綺麗に筋道立てて物を話すなど、最も苦手とする類だった。なんて言えばいい。ていうかこれから話すこと自体受け入れてもらえなかったら、なんて不安がまたも鎌首をもたげる。
でも、黙ったままでいるのは、それ以上にどうしようもなく嫌だったから。膝から真正面のエンに視線を移した。
「本当のこと言うね。アタシ、ここじゃない別の世界から来たの」
腿の上で握る手に力が入る。ゲツェットが小さく「へ?」ともらす。
「……その、地球って惑星の、日本って国から。『魔法』って言葉は存在しているけど、それは創作とか夢の中の世界だけのお話で、だーれも手から火を出したり雷を飛ばしたりなんてできないし機械が無ければ空を飛ぶこともできないしそれこそさっきみたいな瞬間移動なんて夢のまた夢だし、『私は魔法使いです』なんて堂々と言ったら、まず、友達は、できない。だから、正直……急にこんなところに来て、アタシまだ夢でも見てんじゃないかってちょっと思ってるんだ……それで、えーと……」
「ふむ」エンは耀達の前へヒョイと立った。
「ちょーっと待ってろー」
「え?」
不安の色濃くエンを見上げる耀。エンは軽く手で制して「物取ってくるだけだ」と言い残すと、音も無く姿を消した。
かち。かち。かち。
何処かから時計の針の音が聞こえて来る。耀は俯いて、膝の上で掌を固く握りしめる。
「よっ」
そしてエンの声が3人の後ろから飛んで来て、3人は部屋の壁際まですっ飛んだ。
「ほえっ……ほひっ……」
「たっ……たいっ、たっ」
「…! …!!」
30秒と待たない再登場に、皆一様に目を白黒させ言葉を失う。もうちょっと! 間とか! そういうの! あったでしょ!!? 早いよ馬鹿!!! 耀は声にならない叫びを変な呼吸音に変えてこぼしていたが──
「わりーわりー、コレ持ってウロウロしてんのー、あんましー見られたくなくってよ」
エンが手に持っている細長い布の包みを見て表情を変えた。
「そ、それ……」
エンは耀を一瞥すると、それを中空に放った。布の包みは床に投げ落とされるでもなくふわりと宙に浮いて静止、布が独りでに解けて床に落ちて、その中身を表す。
黒い革が巻かれた握り、灰色の石を抱く歯車の形をした鍔、不思議な文字が刻まれた鈍色で真っ直ぐな諸刃の刀身。
「明日ー諸々落ち着いてからと思ったんだがー、どうもーそういう訳にも行かなさそうなんでなー」
エンは耀が座っていた椅子にどっかと腰を下ろすと、ベッドを顎で指した。
「ま、そっちにでも座ってー落ち着いて聞いてくれや。ちっと長い話になりそうだ」
そうしてエンが語ったことは、長い1日の終わりと、長い旅路の始まりを告げた。
理屈の通らない、理不尽極まりない、そんな世界に理由を求める旅路──その始点に、少女は立とうとしていた。
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