幸束蝶のカフネ(台本用)

白神九或

第1話 ニア

要//善とは幸で悪とは不幸か。

人によって答えは違う。果たしてそれは正しいのか否か。

その物差しは自分にある。

だから今、僕がコレを追うことは僕の物差しの中できっと正しいことのだ。


赤井「こーら。要。起きろ。」

要「...いってっ!アッカー、手加減手加減!」

赤井「ホームルームはじめっぞ。大体アッカーってのやめろ、学校じゃ先生だぞ先生。」

要「うっせーよ、近所のおじさんと変わんねぇよ。」

赤井「なんだって?おじさんん???」

要「いてててて!わーったよ!!分かったから頭グリグリすんのやめろ!」

赤井「いつまでも生意気な口きいてんじゃねえぞ。んじゃ、しっかりしてよ、ナナミちゃん。」

要「くっそ!その呼び方やめろ!」

赤井「はいはい、お前もな。ったく、律はあんなに真面目に育ったてのに兄貴のおめぇときたらヨォ。」

要「うるっせ!オレはオレでいいとこあるからいいんだよ!」

赤井「ほーう。じゃ、ちゃんといいと見せろよ。・・・ってことで頼みごと。明日、これ持って校長室まで転校生迎え行ってくれ。」

要「へっ?転校生?てかなんでオレ?」

赤井「いいとこ見せるんだろ、じゃ、よろしくなー。」

要「あ!おい!・・・くっそー、あー、はめられた。」

要「あ、名前・・・。えっと(紙のSE)青名みやこ?」


場面展開(SE)学校チャイムと雑踏


クラスメイト1「要〜。今日カラオケ行こーぜー。」

要「わり、今日約束あるからパス。」

クラスメイト2「かーっ!最近ノリわりーな、ナ・ナ・ミ・ちゃん。」

要「おいおまえそれ!やめろつったろ!んじゃ俺帰るから!」(足音SE)

クラスメイト1「あ!おい!・・・ったく。」

クラスメイト2「足はえーなあいつw ま、仕方ねーよ、弟くんとの約束なんだってよ。」

クラスメイト1「あー、この前そんなこと言ってたなそいえば。」

クラスメイト2「まあ心配なんでしょ。最近多いし、アレ。」

クラスメイト1「アレ?」

クラスメイト2「あぁ、通り魔。」


場面展開(SE)車の音


要「あー!!くっそ!!信号ひっかかったー!また律におこられるぅぅぅ・・・。」

要「というか、さっきからぐるぐるおんなじとこ回ってるような・・・。もしかして俺迷子??律にもらったメモは、っと。あ、あれ?」


男の人「あの、探してるのはこれかい?」

要「あ!これ!ありがとうございます!」

男の人「いやいや、いいんだよ。というより、中を見てしまったんだけども・・・。ご兄弟と待ち合わせかい?」

要「あ、はい、弟と。というか、今迷っちゃっててw」

男の人「なら、ちょうどいい!!」

要「え?」

男の人「ああ、いや。僕がそこまで案内してあげるよ。近くまで行くところなんだ。」

要「いいんですか?」

男の人「もちろんだよ。それにこの店はここからそう遠くない。近道も知っているよ。」

要「ほんとですか!?」

男の人「ああ。さあ行こうか、こっちだ。」

要「はい!」


場面展開(SE)足音


律「ったく。やっぱりじゃん、もう。にいちゃん、いっつもギリギリの約束して結局僕が待たされるの、ほんっと勘弁してほしいんだけど!!」

律「こないだもあんなに確認したのに結局遅れてきたし、連絡ないしでたいへんだったんだからな!」


要「(遠目からだんだん近く)あ、反対車線側のお店!メモに書いてある店だ!こんな細い路地がこんなとこに繋がってるなんてなぁ。」

男の人「お役に立てて何よりですよ、それよりあれは弟さんでは?」


要「あ、ほんとだ!おーい、りつーー!!」

律「要にい!おそいよ!」

要「ごめんごめん!これでも頑張ったんだから許してってー。」


男の人「いいご兄弟ですねぇ。」

要「そうですかぁ?ちょーっと遅れたくらいであの怒り様ですよー?」

男の人「いやいや本当に、いいご兄弟ですよ。だから壊したくなるんですよねぇ」

要「え?」


律「にいちゃん!!!!危ない!!!!!」

律//次の瞬間、兄の体は兄の背後にいた黒くひどく紛い物によって裏路地へと引き込まれて行った。全身に走る悪寒を振りほどいて僕は兄の方へと走った。


律//路地に向かって走る僕の頭に『不幸はいつもそばにある』という誰かの言葉が嫌という程染み付いていた。



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