ひとりぼっちの文化祭

見月 知茶

ひとりぼっちの文化祭

人混みは嫌いなんだ。


今日は2年に1度の公開文化祭。

この高校の文化祭は隔年公開だから気合いの入り方が凄まじい。

この日ばかりは派手な衣装や多少のメイクが許されることもあって、男子の気を引こうと躍起になる女子生徒達の華やかな姿が目に付く。

体育館でのステージ発表が昼休みに入ったせいか、人の多さに息が詰まりそうだ。

窓から見える青い空が遠くに感じて、窮屈な廊下をすり抜けて歩き出した。


鮮やかな衣装のダンス部らしき群れ、ギターを抱えた少女達は軽音部の部員達だろうか。今年度いっぱいでの廃部が決まり、今の3年生が最後の部員となるため今日がラストライブだったはずだ。

文化祭という名前でも、クラスの中心で笑っているのは大抵運動部の華やかな子達。

私のような文化部はむしろ自身の部活の準備があるし、そもそもいつも教室の隅にいる私なんかの出る場面はない。分かっている。

だからこうして逃げ出すんだ。ここは私の居場所じゃない。


文芸部や写真部の展示を覗きながら、どんどん人の少ない方へ向かう。

朝イチのクラス展示のシフトと、午前中のオーケストラ部のステージが終わった今、私の仕事はもうない。

この学校で一番人目につかないこの場所に来るのは何度目だろうか。3階から屋上へと繋がる階段はただでさえ誰も来ない。そのうえ、今日は文化祭。こんな所に来る人なんて私以外いるはずがない。買ったばかりの文芸部の部誌とサイダーと小型音楽プレーヤーを持って階段を上る。

踊り場の窓から聞こえた音に呼ばれ窓の外を見ると、祭り囃しと神輿の列。

夏祭りの季節が来たのか…と呟きながら階段に腰を下ろす。

ペットボトルを開ける気の抜けた音が階段に響く。

こんな祭りも悪くないでしょう?と誰に言うでもなく呟くと、ペットボトルの中で泡が弾けた。

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ひとりぼっちの文化祭 見月 知茶 @m_chisa

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