タイムリミット

 まずい、非常にまずい事になった。

 唐突な彼女からの電話、今から家に行くと言うたった一言のみ。

 それだけで俺は戦慄した。

 即座にこの部屋にある、俺の集めた宝物達を安全な場所へ避難させなければならないと思った。

 本棚のライトノベルは、前に辞書や一般の有名文学作品などで隠す。

 アニメのフィギアなのどグッズ類は、机の引き出しや、クローゼットの中へ。

 エロゲのパッケージは……つうかなんで俺はこんなもんいくつもとって置いてるんだ! かさばって邪魔にしかならねぇじゃねぇか!とりあえずこれもクローゼットへぶち込む。

 ベッドの下の薄い本類は……これも本棚の奥の方へ、ってじゃあさっきやっときゃよかった! 一回辞書とか出してまた入れなおさなきゃいけねぇ!

 そうこうしている内にも、時間は刻々と迫ってくる。

 彼女の家から俺の家まで来るには三十分かかる。

 つまり三十分だけしかない。

 もしこれらの宝物が彼女に見つかれば、なにをされるか分かったものじゃない。

 確実に怒られる。

 最悪全部処分だ。

 考えただけでもぞっとする。

 抱き枕カバーは外している時間は無い、抱き枕ごとこれもクローゼットへ入れる。

 さて次はと部屋を見渡し、そこで俺は気付いた。

 部屋中に張られたポスター、これを一枚一枚、一切傷つけず、破らず、切れ目も入れずに剥がすのは時間がかかりすぎる。

 だがやるしかない。

 俺は一枚目のポスターに手をかけた。

 ピンポーン!

 時間切れの合図が、無慈悲に告げられる。

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