飛ぶ

 見上げる。

 

 高い空、泳ぐのは魚の群れ。巨大な影はクジラの姿。


 幾度となく見た光景。


 違うのは、いつもならこのくちばしを伸ばせば届いたのに、今は届きそうにも無い。


 人は僕らを、空にあこがれる鳥と呼ぶ。


 でも、僕らは空にあこがれた事なんて無かった。


 もとよりこの翼は水をかくためにあったのだ。


 この翼で乗るのは風じゃなくて波なのだ。


 でも、彼等は飛んだ。水も無い高い空を。


 僕らよりも早く、進化を身につけて。


 翼も無いくせになんで飛べるのか、僕らには分からない。


 でも、僕らの食べ物がそこにあるのは間違いない。


 今まで空にあこがれた事は無かった。でも今は飛びたいと思う。


 僕らはペンギン、海を飛ぶ鳥。

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