通せんぼ

「通せよ」

「嫌だ」

 俺は階段の上で仁王立ちする幼馴染を見上げる。

「俺は用事があるんだ、今はお前にかまっている暇は無い」

「屋上に行く用事ってなによ?」

「……」

 放課後に屋上に行く用事と言えば、まあ大体告白されるとかだろうな。

 そして俺も例にもれず、今朝机にラブレターが入っていた。

 送り主は不明だが、屋上に来てほしいとの事だった。

「いいから通してくれ」

「絶対に嫌」

 思えばいつもこの幼馴染は俺の邪魔をしていた気がする。

 俺が何かをしようとすると決まってちょっかいをかけてきた。

 高校受験の時もそうだ。本当はこいつとは違うもっと偏差値の高い所へ入ろうとしていたのに、高三の間ずっと俺のそばにいて、まともに勉強をさせてくれなかった。

 結局受験に失敗し、滑り止めだったこの学校へ来たわけだ。

「どうせフるくせに、どうして行くの?」

 彼女にラブレターの話はしていない。女の勘と言うやつだろうか。

「……なぜそう言いきれる?」

 すると彼女は、勝ち誇った笑顔で答えた。

「だって、あんたがあたしの事大好きだって知ってるもの。そうじゃなきゃ、あんなに迷惑かけたのに、あんたが突っぱねないのはおかしいもの」

 完全な図星に、俺は何も言えなかった。

「あとそれ、あたしが書いたやつだから。答えは……聞かなくてもよさそうね」

 差し出された彼女の手を、俺はやれやれと思いながら、そっと握った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る