春雪

 扉を開け、瞳に映る景色は色めいて、降り注ぐ太陽の光が世界を照らしていた。

 歩く私を春風がなでる。その温かな春の腕に触れた木から、花吹雪。満開の桜並木を、薄紅色の雪がひらり舞う。追う視線の先には、新しい出会い。


 日々は進み、いつしか心に芽生えた気持ち。君に送るは一通の恋文。待っていたのは夕暮れの空の下。

 私たちは二人になった。二人は優しさを感じた。せつなさを覚えた。愛しさを刻み込んだ。


 季節は回り、やがて別れの時、卒業の日。あの日と同じ満開の桜並木。舞うは雪、追う視線の先、見えた世界は歪んでいた。

夢持つ君は行く、飛ぶは遠く海の彼方。


 消えぬ心は痛みを教え、忘れぬ思いは鎖をつける。

 それでも立つのは友の声、それでも止まらぬのはいつかの言葉。苦しみは変わらぬけれど、何故か元気。


 ついに手に入れるは一枚の紙。歩くここは空の港。やがて来るは海の彼方。

 扉を開け、瞳に映る景色は知らない色。向かい入れる君の笑顔が私の心を照らしていた。

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