第18話 教祖
「カルト教団に用はない!」
「キミになくとも私にはあるのだよ。キミはヒーローへの憧れが少なからずあるはずだ。そのために知るべき真実がある」
敵の近接攻撃に反応して防御するのが精一杯だった。しかし僕は短いながらではあるが、実戦の感覚からこの男が本気を出していないことがわかる。おそらく本気を出せば僕なんか簡単に倒せるだろう。
「真実……洗脳だろ!?」
「真実だよ。オーバードフレームはなぜ人型なのか、UEはなぜオーバードフレーム以外の傷をつけられないのか? それらの全てである」
目の前の敵はまるで未来を知っているかのように動いている。僕の動きが完全に読まれていた。僕にはそうとしか思えないほどだった。しかし、なぜだ。今日が初対面のはずだ。
「それが真実だという保証はどこにある!」
「キミも感じればわかる。理屈ではなく、直感的に。だからこそ私は今のキミを圧倒している」
『ルーキーを圧倒する真実なんか』
その瞬間、僕と神父の声が重なった。
「そうキミは言う。私は一言一句同じ言霊を告げた。銀河連合の諸君とは縁があるが、その中でもキミたちは特に強い。そのためこのような芸当は容易く行える。なんなら次の言葉や思考を言い当てるゲームでもするかね?」
この目の前の男は僕と同じことを口にした。これは一体なんなんだ。急に目の前の男に得体のしれない怖さを感じる。
気がつくと目の前の敵はいつの間にか攻撃の手を止めていた。だが攻撃をする気にはなれなかった。おそらくここで攻撃しても簡単に防御されると思えたからだ。
「山賀くん、今日は挨拶に来ただけだ。次にあったときに返事を聞かせてもらおう」
そして敵は児玉さんや氷上のところに赴き、おそらく同じように会話をしたのだろう。少なくともそう思える動きをしていた。
この頃には出現したUEもほぼ片付けられてた。敵のオーバードフレームが自らUEの口と思われる部分に喰われるのもいた。それが彼らの洗礼の儀式なのだろう。
そして僕に言ったように神父は氷上たちとの会話が終わるとオーバード教の連中は去っていった。
艦内に戻ってから、僕は速村先輩からあの神父に関する情報を聞かされた。これまで数多くの戦場に現れながらも、誰からも攻撃をもらっていない正真正銘の化物だということ。
そして僕たちに行ったように戦場で銀河連合の新人を勧誘するとのことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます