第16話 交戦
敵の出現開始するまでのカウントダウンが始まる。今まではどこか夢の中にいるような感覚が心の奥底にあるのを実感する。腕が、体が、目の前に迫りくる恐怖に自然と震えだす。
何度も何度も心の中で大丈夫と唱えても一向に収まらない。他のみんなもそうなのだろうかと、狭いコックピットの中で考える。
そんななかでも、敵は出現するのをやめてくれない。これが僕たちが自らの意思で踏み入れた現実なのだ。
カウントダウンが終わり、敵が宇宙空間を歪ませながら出現する。ゲームというモニターを通して何度も見た光景が、現実のなかで機体のモニターを通して初めて目撃する。
こらまた何度もゲーム中で聞いた敵の咆哮と思える音が僕たちの耳元に届く。これは本当に現実なのだろうか、そう思えるほどにゲームはリアルだった。本当にいつ錯覚してもおかしくないような奇妙な感覚に包まれる。
だが逆にここまで似ているため、少し心の中に余裕が生まれる。むしろここまでゲームに似ているなら、いつものとおりやって敵を蹴散らすだけだ、幸い出現したのは雑魚敵ばかりだ。
「そうだ ! 僕たちはキングをとるんだー!」
気がついたら体の震えは収まり、僕は敵に向かって攻撃を開始していた。そこからは無我夢中だった。ゲームと同じく機体を動かし、仲間に近距離無線を飛ばし戦っていた。
今までゲームのなかで様々な激戦を潜り抜けてきた自信や経験が自然と次になにをすればいいのか教えてくれた。1年ばかりの短い経験だが、それでも1年間ずっと戦っていた相手だ。対処方法は手に取るようにわかる。
他のみんなも同じようになったのか、次々と敵機を撃破して、ついに僕たちの初戦は勝利で終わったのだった。全機大した損傷もなく大勝だった。
そのあとはちょっとした命令違反を艦長から咎められるのであった。しかし、そのあと艦長の想像以上の戦果をあげたために感謝もされた。
そのためか僕はちょっとした
艦長室に1人の訪問者が訪れた。男は部屋の前にある呼び出し音をならし応答を待つ。すぐさま艦長からの返事があり入るように促される。
「今回の任務お疲れさまでした。あなたもあなたの仲間……と言っていいのかはわかりませんが、使い物になる新兵となって嬉しく思います」
「私にとってはそれが生まれによる必然でしたので、それに従ったまでです。こんな生まれでもなければ関わらなかったでしょう。こんなクソったれた世界には」
「そういう種族は銀河中には腐るほどいますよ。私ですら本当は拒否したいところです。このクソったれた世界でしぶとく生きて、いつかUEの存在しない世界を見たいものです」
氷上は善宮の言葉に同意したのであった。
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