第15話 初陣

「発進シーケンス開始」

 機械による自機のチェックが始まる。コックピット内の360度モニターには数々のチェック項目であろう文字が、赤い四角枠のなかに表示されてる。チェックが完了と思われると赤い枠が緑色に変化する。

 そして全ての検査が終わりモニターには『ALL GREEN』の文字が表示された。

「オールグリーン。山賀機、カタパルト、どうぞ」

 僕は訓練でやっていたように機体を動かしてカタパルトに乗る。やがて機体のモニターにはカウントと思われる数字が表示され、これからかかるGに対して身構える。

 カウントが0になると同時にカタパルトが動き出し、僕はGの衝撃を体感しながら宇宙空間へと飛び出された。少し遅れて児玉さんや氷上の機体も僕と同じように出撃した。

 僕のもとに一機の味方機が近づいてくる。ふと周りを確認すると児玉さんの機体にも別な一機が近づいていた、僕の機体に近づいてきた機体が小さなワイヤーを接触させる。

「接触回線で聞こえるよね。今回は敵も規模も少ないし、絶対に僕たちが君達を守るから安心してほしい」

  速村先輩の頼もしい言葉が僕に届いた。

「ありがとうございます。先輩なら問題ないでしょうが、気をつけてください」

 先輩は返事の変わりにか、機体の顔を上下に動かし頷いた。機体が接触回線に使っていたワイヤーを回収して、ブースターを吹かして前線だろうと思われるポイントに移動していく。

 しばらく経過してから、敵のUEがワープして出現してきた。事前情報のとおり敵の規模もゲームとして体験した激戦よりかは遥かに少なく、敵の種類もいわば雑魚敵だらけだった。

 ゲーム基準で考えると、初心者を卒業したものにはなんともないレベルだ。そのため必要最低限の戦力を置いていくつかの機体は母艦付近に戻っていた。

 そこからはカメラを遠距離モードにして 戦闘の様子を観察していた。当然のように僕たちとは比べ物にもなりないくらいの戦いぶりが展開されていた。

 戦闘が順調に進んでいるなか、異変は突如として発生した。別の方角から敵の増援がやってきた。今度は出現予測時間が短く、また規模もそこそこあるために僕ら以外の待機していた部隊が迎撃にあたった。

 最初の敵部隊はほぼ全滅していため、少数機体を残して、増援の迎撃に向かっていた。やがて敵が出現して、迎撃が始まった。

 そこに更なる敵の増援が母艦の付近に発生した。この状況では今すぐ迎撃に迎える部隊は僕たち新兵しかいなかった。

 ついこの間までの軍事訓練の座学において、敵が戦略的な行動をとるのは稀であると聞いていた。そのためこのように増援がでること自体が珍しいとのことだ。増援に増援が発生するのはなおさらだ。

 そう考えていたら機体に無線が来た。すぐさま回線を開き応答した。モニターに先ほどの艦長とブリッジが表示される。

「すみません。事情が変わりました。今から皆さんには先ほどの増援の出現予測地点に向かい、出現次第迎撃してもらいます。ですが安心してください規模は少なく、皆さんが腕前なら大丈夫です。

 それに時間を稼いでくれるだけで大丈夫です。それ以上のことは求めません。迎撃が完了しだいすぐ他の部隊を向かわせます」

 こうして僕たちは初めての交戦が始まろうとしていた。

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