第13話 訓練生

 僕たちが銀河連合軍に入ってすぐに前線に送り込まれるというのはなく、変わりに貴重な人材を育成するための訓練になった。期間は二ヶ月で、訓練施設地球支部というところらしい。場所は南アフリカのだと聞かされた。

 そこで二人の教官と出会い、そして毎日辛い訓練の日々を送っていた。重い装備を担いでのランニングを始めとした、普通の軍人を育成するカリキュラムだ。

 僕のようなインドアの人間には地獄をような日々である。毎日筋肉痛に悩まされ、体中が悲鳴をあげている。日ごとにどこの部位を鍛えるのか変わりに、それを二つのローテーションで組まれている。具体的には上半身の日、下半身の日といった感じだ。

 なぜこのようにしているかというのは、筋肉を効率よく鍛えるためである。筋肉痛になった場所は四十八時間~七十二時間ほどの時間で超回復という現象が発生する。この間に筋トレすると逆に効率が悪化するのだ。ちなみに残りの一日は座学の時間になっている。

 ゲームや漫画に出てくるような鬼教官がいないのが唯一救いとも思えた。

 なぜ宇宙に行ってロボットに乗って戦うのにこのような肉体の鍛練が必要なのかは、初日に教官から理由を告げられた。敵はいついかなる時間に襲撃してくるかはわからず、また戦闘によってはかなりの長丁場になるらしい。

 そのためいつどんな状態でも全力が出せるように、またその力が長く持つように体を鍛える必要があるのだ。いついかなる時代でも戦争は肉体が資本だということだ。

 もちろん自身を護るための護身術やその過程として銃器の扱いも習ってある。こればかりは専門ではなく、また全く詳しくないがミリタリーが好きなので日本では撃てないサブマシンガン、アサルトライフルなどを扱えて嬉しいが。

『皆さん、戦場で優秀な兵士の条件はわかりますか? 生き残る兵士、そして勝利を導く兵士のことです。これらはどちらが欠けてもいけません。

 なぜならただ生き残るだけなら逃げるだけです。また死んでしまっては戦う人間が少なくなるからです。あなた方にかけた費用が無駄になるという側面もありますがね。

 これからあなたがたに万の戦場で生き残れるやうに、万の戦術を教え、万の勝利を導くように指導してきます。さすがにここまでの数字は比喩のような側面が強いですが、我々はその気概を持って教えていきます』

 ここで訓練を始めるときに教官から言われた言葉だ。この言葉のとおりみっちりと戦術と実技を叩き込まれている。また、同じ日にもうひとつ印象的なかとを言っていた。

『皆さん強いとはなんでしょうか? 武器を始めとした兵器や装備が強ければいいのでしょうか? たしかにそれば答えに含まれるものです。しかし、真に強いのということはそうではありません。仮に武器が強くてもそれを存分に活かせないと意味はありません。

 例をあげましょう。剣と銃は基本的には銃のほうが遠距離から攻撃できて強いです。しかし、銃を使う人間が素人の場合は話が変わるでしょう。手ぶれによる照準ずれ、反動の吸収の方法などの様々な問題がでるからです。ましてや大口径の銃などの扱いが難しいのなら尚更です。

 ゆえに皆さんは武器を始めとした道具の使い方、そしてそれを最低限に活かす戦術を学ぶ必要があります。たとえ素手でも相手を自分の有利な地形に引きずり込み、トラップを作り奇襲して虎でも熊でも倒すような存在になってください。これもまた大袈裟な比喩ですがね』

 そうして僕たちの訓練が始まったのだ。確かに大袈裟な比喩だと思うが、そんな存在を目指さないと死んでしまうのだろう。



 そしてときは流れ、僕たちはこの軍事訓練を終えて卒業式が過ぎて――軍人となった

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