第10話 全国大会
一年前、先輩たちが失踪した全国大会の舞台に立つことが出来たことを、本当に実感できたのは見ていた舞台に立っていた時だった。二次予選を優勝した時は頭では理解していたのだが、どうにも現実感に欠けていたのだ。
僕は緊張感に包まれてもいたが、それ以上の興奮が勝っていた。絶対に優勝して噂の真実を確かめてやる。
そんな僕とは対照的に児玉さんはガッチガッチに緊張していた。氷上は僕と同じような雰囲気だ。
予選の時と同じく実況者の相良という人物が実況をやっていた。さすがに全国大会となるとチーム戦の参加者もそれなりにいるようだ。そして、それぞれの部門が別々に始まった。
僕たちチーム戦の概要は特殊な大会専用ステージの攻略、そしてクリア出来たプレイヤー同士の対戦を行うというものだった。全国から集まった猛者たちの中で勝てるのだろうか多少は不安になる。
やがて僕たちの出番となり三人で筐体へと向かった。大丈夫、いつもどおりにやればきっといける。
そしてゲームが始まった。開始地点から全方向に敵機にがいた。数も多く、これが現実なら死を覚悟するだろう。だが僕が根っからのゲーマーゆえなのか、この逆境に絶望せず、逆に奮起していた。
「クソゲーだろうが攻略して見せる!」
そこからは無我夢中で戦った。手薄な場所はなく距離や数、そして敵の種類も均等にばらけていたため、直感を信じて敵陣に突っ込んだ。そしてなんとか包囲網を抜けて、はさみ撃ちにならない状況にもっていきギリギリクリアできた。
やがて全てのNPC戦が終わり、チーム戦の対戦が始まる。残念ながら僕たちのチームは対戦の経験が乏しいために対戦による成績はイマイチだった。そこでCPU線との差を実感したのと同時に、僕たちがこの一年間このゲームをやっていたことが意味がないものになった感じがした。
そのとおり僕たちのチーム・シェムシュンは大会の優勝を逃してしまい、これであの事件、ひいてはあの呪いの噂を確かめることが遠くなる結果となる。そして次は絶対に優勝することを僕は誓うのであった……。
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