第11話 『オイストラッフ様』その1

 いったい、オイストラッフ(1908~1974)さまは、何回『しべこん』を録音したのか?


 数えたことはありませんが、これまでに様々な録音が、沢山、現実に市場に出て来ておりました。


 ためしに、手元にある、『日本シベリウス協会会報』に出ていた、1960年末までに録音された、『しべこん』のリストを見れば、オイストラフさまの演奏は、なんと7種類も出ています。また、これも正規盤ではないかもしれないけど、そのリストにはまだ無い、ピアノ伴奏による演奏のCDなどもあります。(このリスト作成の後に出たものでしょう。)


 ここで取り上げますのは、CDじゃなくて、DVDになっている1966年11月12日のライブです。


 白黒画像で、独特の癖がある昔のライブですが、(今のように、自在にカメラを動かせる訳でもないでしょう。)音はしっかりしています。特にソロは良く録れています。


 やはり、映像があると、聞くだけより、情報量が増えるので、大変面白いです。


 オイストラッフさまは、やはり抜群に上手いです。(世界最高の方ですから、そりゃそうでしょうけど。)

 

 全体的に、あまり音は伸ばさず、スパッと切りまして、未練なく続いて行きます。


 なので、まったく耽美的にはならず、あっさり味です。


 何処をとっても、お手本そのものであり、理想的な音楽です。


 演奏に必要な動き以外は、一切なし。


 無駄なものは、皆無です。


 こうした、演奏スタイルというものは、演奏者さまそれぞれでありまして、そもそも横で指揮している、ロジェストヴェンスキーさまが、また、とっても謎の個性派。こちらも、派手さは皆無。体の動き、手の位置、なんだかちょっとかわってるけど、こうして見ていると、やはり実に的確。


 カラヤンさまのような、振り付けしたんじゃないかしら、と思うくらいの、華麗な指揮姿からしたら、いささか、やぼ。そこが良いのです。


 シベリウス先生の音楽のみに、この時間、この命、すべて捧げます!


 まあ、そうした演奏です。


 あとは、聞き手の趣味の問題です。


 やはり、オイストラッフさま、恐るべし!

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