第6話 『クーレンカンプ様』

 この録音は、ナチス支配下のドイツ時代にあって、当時ドイツ最高のヴァイオリ


ニストだったクーレンカンプさま(1898~1948)が弾いているということ


と、それにもまして、あのフルトヴェングラー先生(1886~1954)が指揮


をしているということが、さらにその存在意義を高めています。


 クーレンカンプさまも、フルヴェン先生同様、ナチスに真っ向から歯向う事も


あったという気骨のある方です。


 ときに、やましんは、昔から、どうもこの演奏は、フルヴェン先生が、力づくで


シベ先生の音楽を、あたかも、握りずしに、しようとしているように感じておりま


した。


 しかしながら、今回何度か聞き直してみて、もはやそういう感じがしなかったの


で、この意見は撤廃しました。


 1943年2月のライブ演奏と言われるものです。


 さすがにドイツ(録音技術は非常に高かった・・・)なのか、戦時中の大変な時


期でもあったのに、音自体はそんなに悪くありません。


 管弦楽はベルリンフィルなので、音は重めでがっしりしてます。


 クーレンカンプさまは、さすがに上手いです。


 確かに、フルヴェン先生は、個性的な表情も求めていますが、ストコフスキー先


生と比較しても、異常に変なわけではありません。


 第1楽章終結部の、非常に合わせにくいところでは、ちょっと、もしかしたら、


わざとテンポを落としたのかもしれません。


 でも、ぴったりと合っています。


 こうした時期にあっても、一途に音楽に対して、真っ向から立ち向かっていると


考えるのが正しいのだろうと、思います。


 この作品の演奏・録音史には欠かせない、歴史的演奏の記録であります。


 なので、これも盛んにリメイクされては、あれやこれやのLPやCDが発売されてき


ました。


 とっかえひっかえ、同じ演奏を違うLPやCDで聴き比べるのは、マニアの大きな楽


しみですが、いつもそこそこ売れるらしいところが、いかにも、フルヴェン先生の


いまだに、すごいところなのです。

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