第5話 『イグナチウス様』

 やましんは、この演奏は大好きです。


 とてもしっとりとした、ピュアな演奏です。


 心を洗われるような、じんわりとした名演奏です。


 アニヤ・イグナチウスさまは、フィンランドのヴァイオリニストです。


 この録音は、1943年のもの。


 指揮者さまは、アルマス・ヤーネフェルトさまです。


 オケは、ベルリン市立管弦楽団。


 この指揮者さまは、いわずと知れた、シベリウス先生の奥様、アイノさんの二つ上のお兄さまです。


 作曲家としても、知られています。


 ということで、この演奏は、シベ先生のごく身近にいた方の演奏なのです。


 イグナチウスさまは、この録音でことのほか有名であります。


 また、まだ元気に生きていらっしゃったシベ先生が彼女の演奏を聴いて、賞賛したと言われています。


 ヌヴーさまのように、全身全霊で弾ききる、というのではなく、静かに語り伝えるというような感じで、しかも指揮者とオケとソリストが、大変うまく溶け合っているので、ハイフェッツさまとストコさま型のような、なんとなく『対決!』という感じではありません。


 それでも、終楽章の終盤近くになると、突然それまでは見られなかった、大見得を切ります。それを合図に、ハイフェッツさまも、真っ青というくらいの速度で進みます。実は、すごい技巧の持ち主でもあったわけです。


 そうして、やましんが、もう感涙にむせぶ中、終結するのです!


 録音が古い分、一般的には、ちょっと音が必ずしも良いとは言えないのですが(この時代の録音に慣れてる方は、「いや、いい方だよ!」 というでしょうけれども・・・)演奏自体は、これもまた、たいへん個性的で、優れた演奏であります。








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