7-2 舞台裏
「ルプスレギナ。MPを。」
もう何度めだろうか。MPがいくらあっても足りない。決してミスのできない、記憶改変の第一段階だった。自分の行動を他人の目から見る。自分の記憶との混乱も起きかける。
「アインズ様、少しお休みください。」
「そうも言ってられんさ。こうしている内にも、戦が再燃しかねん。」
「こんな小娘、《チャームスピーシーズ/全種族魅了》で支配してしまえば。」
「アルベド。言っただろう。それでは進歩がない。恒久的な洗脳はこうするほかない。」
そう言ってもアルベドは不満げなままだった。わかっている。本当は記憶改変の一部、愛し合っているという設定が気に食わないのだろう。アルベドと同じ設定であるがために。
「すまないな。」
「何を。アインズ様が悪いことなど、この世に有ろうはずもございません。私はただ、この小娘が。」
「アルベド。私にとって、このナザリックと、お前たちの幸福以外に望みはない。このドラウも、お前たちの幸せに比べられはしないよ。」
ドラウが結婚するつもりだったというのは、驚いたが嬉しいものがあった。しかしアルベドが変になりそうだったので、そっと消して、愛し合っているに変更した。それが軽はずみな行為だったと気づいたのは先刻だ。
どうにも自分は同じ過ちを繰り返す傾向にあるらしい。
「さて、休憩も終わりだ。記憶の大まかな変更はすんだ。後は肉付けだな。」
記号的な特徴があっても違和感が残る。その前後を支えるディテールの深さがキャラクターを生かすんだよ。
そうタブラさんは言っていた。まさか自分が彼の言葉を身をもって知る時が来るとは。この世界にタブラさんが居たら、ホムンクルスでも作って設定をつけまくるだろうなぁ。もしかすると設定上の国を作っているんじゃないだろうか。
「そういえば、あの従者はどうするかな。何か案はあるか。あいつのタレントは邪魔なんだが。」
「タレントの実験に使えないでしょうか。タレントを誤認させる。つまり、カルマ値は種族特性に過ぎず、性格に関係はない、とか。」
「ほう、面白いな。ドラウを起こしてからいじってやるか。復活直後とかで隔離すればいいのだし。」
さっそく《コントロール・アムネジア/記憶操作》を発動させる。まずは、そうだな。ヘジンマールの旅を脚色してみるか。楽しい旅にしてあげよう。
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