6-3 晩餐 後

「アインズ!ごめん。あいつには、後で言っておくから。だから、二人だけでも、晩餐をしよう!さっきの肉は?あれ程の肉、見たこと無かった。」


 切れた息でアインズに呼びかけた。宙に浮いた鏡がアインズの前で輝いていた。


「アインズ?怒っているよね。すまなかった。私が考えなしだったんだ。あいつ、私ことを。だから、多分。だから。あいつ、あんな事を。」

 

 声が遠くに反響する。テーブルには冷めた料理が並んでいた。


「ねえ、アインズ。」

「君は、それなりに好きなんだ。信じているよ。」


アインズが静かにモノクルを外す。冷めた金属音。


「じゃあ、アインズ。」

「だけど、止むをえまい。すまないね。<タイムストップ>」









 体が凍り付いていた。知っている感覚、麻痺だ。それが事実だった。不死者などに気を許してはならなかった。忠臣を信じられなかった愚かさを知る。


「何、恐れなくてもいい。君に私を疑う種がなければ何もしない。信じているよ。痛みもない。消すのは今、この部屋に入ってからの記憶だけだ。

 …それでも怖いか。残念だ。どうやら見せられない記憶が有るね。信じていたのだがね。残念だ。これから君の記憶を見て、悪い処があれば矯正する。

 怒らないでくれ。記憶をいじられても、幸せになればいい。真実なんてものは認識にすぎない。どうせなら都合がいいほうがいいだろう?ほら、ドラウ。言ってただろう。信じてくれると。そのままの方が共に幸せじゃないか。」


 頬を涙が伝う。私は、この男を信じた。この男が私の全てを奪った。私は、忠臣を捨ててしまった。


「大丈夫。君には色々楽しませてもらった。だから、君には楽しい記憶をあげよう。平和もあげよう。心配しなくていいよ。

 でも記憶の操作は難しいんだ。君が抵抗すれば間違って色々消してしまうかもしれない。そうしたら、君は廃人だ。それは悲しいだろう?」


 ああ、セラブレイト。お前は正しかったよ。こいつほど悪性が強い奴はいまい。すまなかった。


「さて、首を自由にする。言ってくれ。受け入れると。幸せになろう。」


 ああ、私は、今ここで。


「受け入れる。好きしろ。悪の王よ。」

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