6-1 国の姿
「来い。ヘジンマール。さて、知ってるかな。フロストドラゴンというのだ。多少太り気味ではあるが。」
現れたドラゴンを見るに、確かに噂に聞く細身のフロストドラゴンより大型だった。
「陛下の忠実なる従者、ヘンジマールです。お見知りおきを。
ところで陛下、このお方は一体どなたで。」
「当ててみろ。クイズだ。いや、すまない。少し失礼だったな。」
振り返り伺う魔道王に問題ないと告げた。まだ僅かな時間しか共にしていないがこの男、気を使いすぎる様だった。
「そうですね。見た目はヒト族。ですがその目、ドラゴンのものですね。
竜人のハーフ、ではないですか。竜王国は王の国だと思っていましたが、女王でしたか。」
「いや、その王の娘だ。よろしく。ヘンジマール。」
竜は天へ伸ばした首を地に下ろし、平伏した。
「見事だ。図書館が役立っているようでなにより。さて、今日はカルネ村とリザードマンの村まで飛んでくれ。ドラウ。落ちそうになったらペンダントを使え。いいな?」
「大丈夫だって。中身まで子供じゃない。行きましょ。ほら、早く。」
同じロリコンでも、粘っこいセラブレイトとは違った気まずさだった。完全に子供扱いというのも気恥ずかしかしいものだった。
竜の背には大きめの鞍がついていた。乗りづらかった。
「ねえ。アインズ。この都市はどう発展させるつもり?防壁の中に収めるの?」
「いや、まだ先だが壊す。今はまだ居住区と街路の調整中だ。人間種との文化の違いや体格の違いが、施設の流用を許してくれない。」
「なら、種族ごとに区域を決めるの?」
「ある程度はな。ただ隔離にならないよう、融和政策をとる方針だ。」
その後も矢継ぎ早に質問をぶつけてみた。そのすべてに答えが返ってきた。未来の夫が民の暮らしや内政に熱心だった事が嬉しかった。
「感心ね。内政について詳しく意見できる王は案外少ないのよ。」
「う、む。まあ、彼らは我が名の元に暮らす者達なのだからな。今向かっている村は亜人とのいい共生関係が築けている村だ。我が国の向かう先でも有る。」
「カルネ村。楽しみね。でも、貴方が来たとなれば騒ぎになるんじゃない?」
「分かっているさ。そら、<完全不可知化>」
アインズの姿が消え、竜の姿も消えた。唐突に中空に放り出された様に思えた。あわててペンダントを探る私の手を白い腕が捕まえた。
「ははっ。すいぶん驚いたな。すまん。冗談だって。そう怒るな。だが分かったろう。この魔法なら気づかれない。」
「それだけ?そのためだけに?」
「すまん。すまんって。おい、こけるなよ?」
力のかぎり肋骨を叩いてやったが、微塵も揺るがない。壁のようだった。自らの無力を恨んだ。
「あなた、戦士職も持ってるの?」
「いや、上位物理無効さ。まあ、気落ちしなくていい。大抵の戦士にも破れんからね。戦士、といえば。君の言っていたセラブレイト君の復活後の訓練に、うちの冒険者も混ぜてくれないか。うちでは聖戦士系が人気でね。」
なんとも皮肉な話だった。アンデッドが聖者を育てるとは。
「ありがとう。助かる。そうだ、留学なんてのも企画しているんだが、そちらも受け入れてくれないか。好きな様に使ってくれて構わないから。師匠の国で学ぶというのも乙じゃないか。」
そう語っていたアインズは人間の、子供のようで、かわいいとすら思えた。
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