5-1 国の行方 前
今回は設定や辻褄あわせ、女王が急にアインズと親しくなった様に見えないようにするための回です。飛ばして頂いても結構です。
「それで…なんで私は裸だったのか教えてくれる?」
非常に重要な案件だ。今後の信頼関係にかかわってくる。メイドが魔導王を呼んで開口一番に尋ねた。
「え…?あ。そ、その件は事故だ。こちらも対応がまずかったかもしれないが、故意ではなかった。」
「どんな事故があり得るの?あの服は防御魔法を付与していたはず。私が気絶中に大人の姿になっていたようだけど、魔法がかかってる服は対応できるでしょ?」
軽い物理と魔法からの防御と精神防御、毒物抵抗がかかっていたはずだ。
「いや、そこだ。魔法がかかっていた。君が急に大きくなるもんだから、様々な抵抗魔法を掛けたんだ。君のドレスにも。
道具に適正でない方法で魔法を重ねた時、二つの魔法が争う。元の魔法が勝てば変化はなかったが、私の魔法が打ち勝ってしまった。」
「それで私のドレスが壊れた…それは信じるしかないのね?」
「信じてもらうかないが…いや、そもそも骨の私に何が出来る。アルベドも、君も、骨からどうやって子が生まれると思ってるんだ。」
確かにそういえばそれは当然だが…あの時の彼の動きは人間臭かった。つまり、嫌悪感を導く何かがあったように思う。
「だけど、なぶる事はできるはずよ。そもそも子が出来ないからと言って、それがつまり性的な意味を持たないとは言えないし…」
「う…いや、そんな筈は…無い。有ったなら君が無事なはずは無い。だろう?」
「…つまり、信頼するしかないってことね。じゃあ、これは一旦おいて話を進めましょうか。ここからは国の王としての話にするわ。」
いまいちはっきりしない態度だったが、話すうちに色々分かってくるだろう。この骸骨が
「そうしてもらえれば助かる…そうだな、こちらからは三点ほど話しておかねばならない事が有る。」
「私から聞きたいことと言えば、私の国の民の現状とあなたの目的くらいね。」
「話の内容に含まれているから、先に話させてくれ。まずは、そう。謝罪だ。
今回の件、すべてこちらの独断だった。了承を得る前に私と部下を君の国に入れてしまった。すまない。」
「そこは理解してるわ。むしろあなたの支援は有難かったわ。」
「そうか。理解してくれてうれしいよ。それで残り二つは提案だ。まず我が国のことを知ってほしいという事。そう、実際に見てもらいたい。
もう一つはビーストマンたちとの関係についてだ。」
「関係?貴国はそこまで介入するつもり?」
国交が無かった国が戦争に介入するなど、そうある事じゃない。
「ああ、そのために我が国の事を知ってもらいたいんだ。」
「介入の仕方によるわ。そこを聞かなかったら無意味な時間の浪費になる。そちらを先に話してもらえない?」
「分かった。話してみたところビーストマンの首脳は極度に君の魔法を恐れている様で…ああ、使者を送った。周辺国として両国に起きたことを説明してもらいたい、とな」
「…それはつまり、場合によっては敵に回るということ?」
「まさか。まあ、端的に言えば仲裁役を買って出たいんだ。」
「仲裁?仲裁と?今更、あの、王都の民を犠牲にしておいて、和平なんて…」
「出来るさ。今回の件でビーストマンたちは、頭上にあの魔法の落ちてくる幻影が消えなくなった。これが君の力だ。
…いやいや、嫌みじゃない。彼らにとって、君は破滅へ導くモノになった…ここが分岐点だ。
ここで和平が成らねば、彼らは存亡をかけて攻めてくる。つまりさらなる戦火が広る。そうなれば、君はいずれ再びあの魔法を使わざるを得なくなるだろう。」
私が。再び。宰相たちの、国民の、あの犠牲の上にさらなる死を積むのか?
「でも、仲裁なんて可能なの?それより法国に…」
「ハッ、法国ね。人類の救世主か。…すまない。私怨だ。
だが、とにかくそれは不可能だ。かの国は我が国にご執心なんだよ。こんな姿なもんでね。」
「何?それならあなたのせいで我が国は?」
「違う。勘違いしないでくれ。もとより法国に力はなかった。それは君も知ってるだろう?援助が減ってたんじゃないか?」
確かにそうだった。だから帝国に…帝国の使者はどうなった?
「帝国に頼るのも無意味だ。わが属国がからな。貴国に駆け付けられたのはそこからの情報だった。」
「帝国が、属国…」
「我が国の国力はちょっとした物でね。向こうからの願い出だ。…どうだ?和平の頼りにしても問題ないだけの力は有ると思うんだが?」
確かに帝国が属国を願う程ならば、弱った法国よりは価値がある。しかしそれ以前にこの王の目的が分からない。
「…分かった。助力を願いたい。それで貴国のメリットがあるのか疑問だけど。」
「あるさ。まあ、これも知ってもらいたいことの一つなんだがな。我が国は全種族の共存を願っている。」
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