3-2 モルモット
3-2
戦士としての観察力に最も優れている老剣士が叫ぶ。
「目標、3体共に推定レベル40前後。防御型。我らに分がある。」
「盾で足止めをしながら、剣で体力を削ってやれ。私達は後衛としてダメージコントロールをする。」
「「「了解。」」」
付き合いも長く、魔道士の指示を聞かずとも皆流れるように連携を取る。盾戦士が2体を引きつけ、剣士が残り一体の体力を削る。神官が盾戦士を支えながら信仰魔法を叩き込む。魔術士は双方へ指示を出しながら剣士側のデスナイトを集中して攻撃していく。
やがて剣士のデスナイトが崩れ落ち、手すきになった剣士は残りのデスナイトを背後から急襲する。包囲されたデスナイトは魔術士を狙おうとするが、前衛がそれを阻む...
「ほう。流石にうちの冒険者達とは比べ物にならんな...」
ナザリックの執務室に浮かぶ水晶体の映像を見ながらアインズはため息を漏らす。
「ええ、ですがこれでも法国の特殊部隊の引退組です。この実力を持つ人間はそう現れないのでしょう。」
仮面を外し、臣下の礼をとるデミウルゴスが進言する。確かにすぐに大きな才能が見つかるとは思っていなかったが、それでも。
「デスナイト位、早くこんな風に扱えるようになって貰いたいものだよ。」
「ええ、アインズ様の生み出されたアンデッドを相手に、毎日訓練をしているのですからね。歯がゆいものです。」
「おお、倒し終わったようだぞ。次は?」
「人間と体格の違う者たち、ソウルイーターやボーンヴァルチャーなどの構成です。」
画面の向こうで再び鉄柵が持ち上げられ、現れたモンスター達が乱戦を繰り広げる。
「ふむ。まあ、指導の糧にはなるな...それで?奴らの占術はまだ来ないのか?」
「その様です。あの人間が持っていたクリスタルは時間停止と精霊の導きでした。脱出を前提としている以上、過度な期待は出来ないかも知れません。」
万が一のため、わざわざフェイクの情報をばら撒いてやったのに意味が無かったという事か。
「ではワールドアイテムが奴らの仕業であるかどうかは、結局尋問してみなければならないのか?」
「そうなります。既に、尋問の前に一人ひとり記憶を弄る用意は出来ています。」
「分かった。ご苦労。残りの捕虜達も同様にな。モンスターに対抗できなくなった時に気絶させろ。」
「はっ。」
もはや達人の域に達していると自負するほどに、記憶操作は上達した。記憶を弄り、我らを仲間と認識させる実験を行う予定であった。
「そういえば、デミウルゴス。あの羊皮紙はどうしている?」
「引き続き採取しております。任せていただいた、あのカッツェ平原の施設を使っております。」
「そうか。国内が安定し次第、カッツェ平原の開拓に乗り出すからな。その時に国有の施設として改築するつもりだ。今は狭いだろうが、我慢してくれ。」
デミウルゴスに与えたのはエランテルの冒険者施設の2倍ほどの大きさの施設だった。しかし、その大半は実験場で、自由なスペースは殆ど無いはずだ。
「とんでもない!あの様な施設を自由にさせて頂けるとは、この身に余る光栄です。」
「満足してくれているの良いが...そのうち問題も出てくるだろう。改築の時までに不満点をまとめておいてくれ。」
カッツェ平原の開拓にはアインズの妄想を具現化するため、アルベドやデミウルゴスにかなり働いて貰っている。これ位の役得は有るべきだろう。
「有り難き幸せにございます。...では、そろそろもう一度向こうに転移させていただきます。」
「ああ、後は頼んだ。私の記憶操作が必要となったらまた呼んでくれ。」
ゲートを発動させてやり、デミウルゴスを見送る。水晶体の中ではソウルイーターが倒された所だった。録画状態を維持したまま、対象を変更する。
(さて、尋問までの間、竜王国でも見物するとしようか。)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます