1-3 噂
午後からは、アルベドの報告を聞く予定だった。と言ってもアインズのすべき事は何もない。アルベドの報告を理解するフリをして、適度に尋ねる。それだけだった。なのにーーー
(何で、フールーダがいるんだよ!あー、会いたくないランキングのトップなのに、ぐおおおーーーふう)
もはや意図的に使う程になった精神安定化を駆使して冷静に考える。
(まさか、もうあの本読み終わったのか?仕事を回して妨害してたのに?いや、この前あった時の進捗からしてありえない。なら、帝国で何か起きた?いや、それならフールーダじゃなくてもいい。...ダメだな...全く分からん。ええい、ままよ。)
「よく来た、フールーダよ。それで...アルベド、説明を聞かせてもらおうか。」
「はっ。この世界における強者たちの情報をこの者が知っておりました。」
アルベドの硬い声から、それが軽視出来ない者であることを知る。であれば、それはーーー
「それは、我らに仇なした、あの...あの許しがたい愚か者を見つけた、と?」
ふつふつと底知れぬ怒りが湧く。低く唸りをあげる怒りはすぐさま沈静化されるが、それが余計に冷たい怒りへと研ぎ澄ましていく。
「いえ、恐らくは別かと。ただ、何らかの繋がりは有るでしょう。まずはこの者の説明をお聞きください。」
「繋がり...フールーダ・パラダインよ、話すがいい。」
「はっ。かの下賜して頂いた本についての研究の中で、気になる点が出てきたため各神話を辿っておりました。そして原初の魔法についての記述を見つけたのです。原初の魔法と言うものは、500年以上前に使われていた魔法であり、魂を使う魔法のようです。」
「魂...確か、魂は波の飛沫の様なもの、大きさに違いがあれど本質は同じ...だったか?」
「はい、そしてその話に陛下が仰っていたレベルとういう概念を当てはめますと、レベルの上限が魂の限界なのでは、と思い至ったのです。」
「なに?では魂を使うと言うならば、原初の魔法と言うのはレベル上限が下がってしまう魔法だと?」
「いえ、恐らくは他者の魂を使うのでは無いでしょうか。他者を倒した場合、経験値なるものが手に入るとのことですが、それは魂なのでは無いでしょうか。そして、レベル上限は他者の魂を受けいれる限界なのでは...」
「なるほど...で、繋がりとは?」
「その魔法を使うドラゴンロードは600年より昔から生きると聞きます。であれば今までに居た強者についての知識もあるはず...アインズ様の求める何らかのアイテムも持つやもしれません。」
全身を支配していた怒りは失せ、未知の魔法への探究心が湧く。この世界に来てから初めての強者の予感、それは我々ナザリックの強化への可能性。
「ほほう。実に興味深いな。それで、それを使える者は?」
「ははぁっ、アーグランド評議国のドラゴンロード、及び竜王国のドラウディロン・オーリウクルスのみかと思われます。」
「アーグランド評議国...王国の向こう、か。王国を食糧難から救ってやってからだな。竜王国の方はカッツェ平原の隣なのだし、国交を持ってみるのも手か...フールーダよ、竜王国について知りうる全てを話せ。」
「は。竜王国は200年前には既に存在した国です。魔神らとの戦争を生き抜いた国ですが、現在東方のビーストマンの侵攻に苦しんでおり、法国から援助され、何とかこらえています。」
「そのドラウディロンは、原初の魔法を使っていないのか?」
「かの女王は竜王の子孫であるだけです。好きに使えるわけではないのでしょう。」
(ふーむ。じゃあ非常事態なら使うかもしれないのか。どうする?分からんな。アルベドに聞こう...)
「うむ。話はよく分かった。では、フールーダよ。ご苦労。褒美はまた後の機会までに考えておこう。少し、外してくれ。」
これ以上、規格外の知恵者二人に対する知ったかぶりは危険だ。フールーダが何か聞きたそうにこちらを見てくるが無視してメイドに案内させる。
(さて、どうするかな。)
フールーダが部屋を出るのを眺めながら、今得た情報をまとめていた。
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