第2話 これより先は

今日は体育の授業がある。


「今日の授業は50m走のちドッチボールだって」


「そうなんだ……」


速度はため息を吐いていた。


「なんか元気ないね」


「走るのは嫌いだから」


「そ、そうなんだ」


停止は速度の胸を見てそれが重いのではと思った。


「ほほほ、それじゃ今日はわたくしの勝ちね!」


大声で二人に話しかける者が現れた。


「あ、速度《そくど》さん」


「その名で呼ぶな!」


停止に名を呼ばれた最高 速度《さいこう そくど》は騒いだ。


「速度ちゃんは元気だね」


「その事も言えるのも今のうちよ!」


指をさす最高速度。


「また勝負するの?」


停止はため息を吐いた。


「同じ速度と言う名前同士負ける訳にはいかないわ!」


「だって、速度ちゃん」


「そう言われても私は同じ名前同士仲良くしたいのに」


最低 速度《さいてい そくど》はニコニコ言う。


「さあ、見てなさい!」


最高速度はそう言いて部屋から出て行った。


「なんか勝負することになったね」


「結局体育はやるのね」


「いやいや、体育はやろうよ」


とぼとぼ歩いて部屋を後にする二人。





「次の人」


記録係が掛け声をかける。


「それじゃ行ってくる!」


「うん頑張って」


停止が走る準備する。


「位置についてヨーイ、ドン!」


掛け声とともに走り出す。

停止は走るのが楽しいのか笑顔になりながら走る。


「ゴール!」


走り終えた停止は振り返り大きく手を振って最低速度に合図する。


「それじゃ次の人」


「ああ、私の番になってしまった」


「さあ勝負よ!」


「私は勝負したくないんだけど……」


ここで最低速度vs最高速度が競争することになる。


「位置についてヨーイ、ドン!」


走る二人。


「ははは、この勝負は私の勝ちだわ!」


「はあはあ、もう無理」


勝負は目に見えていた。

通常の人より速く走る最高速度。

通常の人より遅く走る最高速度。


「お疲れ速度ちゃん」


「うん……疲れた」


「ははは、この勝負はわたくしの勝ちね」


「速度さんも息切らせているね」


「べ、別にわたくしは疲れてなど」


「それは無理だね。速度さん」


「いいでしょ!」


最高速度は少し顔を赤くしてそっぽを向いた。


「そうだ、この後ドッチボールやるんだよね」


「そうよ!この後のドッチボールでもう一度勝負してあげてもいいわよ」


「え、こんなに疲れているのにもう一度やるの」


最低速度はなんとも言えない顔と声色で言った。


「(あ、この速度ちゃんもういやいやな顔だ)」





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